第19話 遅れて登場
「かかってこい。捻り潰してやるよ、ガキ。」
俺は無言で男を見つめ続ける。どう殺してやろうか。簡単に殺しはしない。生きていることを後悔させて死を乞わせてやる。精神的にも殺してやる。
「どうした?時間が経てば経つだけお前の仲間が危なくなるんだぞ?」
「お前程度で俺の弊害になると思うな。所詮お前は自分の野望のために犯罪を犯すクズだ。」
俺の挑発にも簡単に乗る。今の一言で男の中で何かが吹っ切れたのだろう。男はマイクで喋り始めた。
「殺すなと言ったが殺せ。逃げた奴も、あのクソガキも。全員殺せ。」
「そんなぺちゃくちゃ喋ってて良いのか?」
一瞬で距離を詰め男に拳を叩き込むが、俺の拳は透明な何かに阻まれる。
「科学を舐めるなと言ったばかりだろう?」
男の手には銃が握られていた。そして俺は男の目の前に…まずい。咄嗟に真上に飛んで銃弾を回避する。
「素晴らしい力だ!!何をしてでも私のものにしてやる!!」
「黙れよ、耳障りだ。」
怒りのままに炎弾を男に当て続ける。煙によって男の視界を制限するため絶え間なく。数秒で体育館は煙で覆われ、俺は気配を消して男の元に移動した…つもりだった。
「なっ…」
だがそこに男の姿はなかった。この煙を煙幕代わりに使って逃げられた…?じゃあ逃げた目的は?
「あいつらっ!」
油断した。考えなしに動くからこうなるんだ。あの男のせいで…あのゴミ…。段々自分の思考が狂ってきていることにも気づかず俺は全力で気配察知を発動。まだ全員生きている。早く皆の元に。敵は全員殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
壊れていく俺に俺自身気づかなかった。後から聞いた話だが、この時の俺は怒りで”俺”が干渉するのを封じていたらしい。
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side:kutinasi
彼女らは全員固まって逃げていた。先程全員の容姿がかつて自分がかつて願った姿になった事により、少しの間思考停止に陥ってしまったのだ。その時はクチナシが永遠の能力だろう、と結論づけたが、そのタイムロスは大きい。このままじゃいずれ捕まる。どうすれば…。遠くから男達が走ってくるのがわかる。私に何が出来る?組長として、皆を守らないと…必死に考えていたクチナシ。その時だった。
「全員伏せろッ!」
どこからか聞こえた聞き覚えのある声。全員が伏せた直後、向かっていた方向から男達の方へ光線が放たれた。
「間に合った…」
「その声は…高音?」
現れたのは三人の少年だった。
「永遠から能力もらってたんだよ。あいつが攫われる前、キャッチボールしてた時。見た目がこんなんになったのはビビったけどな。」
「だからボク達は攫われてから姿を隠してここの人を片っ端から戦闘不能にしてきた。」
「永遠はどこだ?」
斗亜、玲、高音。皆が中学3年生、永遠の同級生。もしもの時のために能力を渡していたのだ。高音の疑問にクチナシはありのままを告げる。
「私達を逃して戦ってくれてる。」
「あいつらしいな。じゃあ、玲、高音。俺らでこいつら全員出口まで連れてくぞ。」
「「もちろん。」」
斗亜の出した案は簡単だ。少人数で固まって逃げるが、常に視界に全員が入る程度の距離を保つ。グループは斗亜班、高音班、玲班、クチナシ班に分ける。
「一人でも欠けてみろ!永遠に殺される。死ぬ気で行くぞ。」
今は位置がバレるとまずいため、高音の言葉に全員が無言でうなずく。そして悲劇は終盤へと向かっていくのだった。
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