第3話
ダンジョンはゲートを境に内部の環境が変わっている。
各国は最初にゲートを破壊しようと現代兵器を使用したが破壊できなかった。 そのためダンジョンの資源を産出するようになると政府は破壊から利用に目的を変えていった。
ダンジョン内部は迷宮や平原、墓地、砂漠など幅広い環境になっていて探索者を苦しめる。極端な環境だと海中ダンジョンみたいなものから雲の上のようなものまである。ダンジョンの環境も場所によって三種三様でその理由は未だ解明されていない。
しかし、世界中の学者は少しでもダンジョンについて解き明かそうと研究し、今では多くのダンジョンの論文が発表されていた。
僕でも知っているくらい有名なものを例に挙げるとアメリカの論文だ。
研究テーマはセーフゾーンの存在とその地帯で確認されている魔力の解明だ。一定以上の難易度のダンジョンではモンスターが寄り付かないセーフゾーンと呼ばれる安全地帯が確認されている。
そこでは魔術師や魔法士によって特定の魔力が発見された。驚くべきことにその魔力は俗にパワースポットと呼ばれるところにも確認されたんだ。
そのため今ではパワースポットの水などが簡易的な魔物除けの結界として使われているのがメジャーになっているんだ。ただ万能というわけではないんだよね。パワースポットの水はその場を離れるほど段々と効果が薄くなっていく。
だからよっぽど近くにパワースポットがない限りは運搬費や管理で意外とお金が掛かって、パワースポットが遠いダンジョンで使用しているのは自衛隊や企業の探索者が中心だね。
世界的に有名なダンジョンだとアメリカのニューヨーク、ラスベガス、イタリアのローマ、ヴェネツィア、フランスのモン・サン=ミシェル、中国とロシアとイギリスに一つずつ、そして迷惑なことに日本に4つ北海道、東京、愛知、大阪、にある。
ダンジョンが多いのは資源も豊富になりいい事だがそれと同時に脅威でもある、ダンジョンの数だけスタンピードつまりモンスターがダンジョンから溢れる危険が高いのだ。
ここ名古屋低級ダンジョンはベーシックな坑道ダンジョンになっている。
ダンジョンには低級、中級、上級、特級に分けられていていて、低級は最大20層で層毎の敵の強さは余り変わらないけど数が変わってくる。中級は最大40層で敵も深く潜れば潜るほど強くなっていく上に罠も出てくる。上級は60層、特級はそれ以上と世界基準として定められているけど実際はそんなに深くは攻略されていないため上級や特級は未だに確認されていない。
しかし上級以上からは明らかに敵の強さが変わってるくるので仮の難易度が設けられている。どのダンジョンにも共通しているのは10層ごとにボス部屋がある事だ。
ボス部屋にはそのダンジョンに出てくるモンスターの同系統の強めのモンスターが出現する。危ない部屋だと思うかもしれないけど、自分に合った難易度に挑めば危険はあまりないし、ボスを倒した後ボス部屋はモンスターが入ってこないので一時休憩の場所に使えるんだ。
僕達がダンジョンのゲートをくぐると一気に視界が変わる。くねくねとした道で坑道の割に広くなっている。不思議と道の脇には松明が等間隔に置かれている。これはダンジョンが出来た当初からありその火は消えることはなく、その松明が何らかの影響によって破壊されることもないらしい。
「やっぱ一気に環境が変わるのはなれないな」
正義はソワソワした様子で周囲を見渡していた。
「そうかな、正義が緊張しすぎなだけじゃない?」
「でもよぉ、今日は親の言いつけのせいだしよ。まだここは初めてだし、俺はダンジョンに入るのは3回目なんだぞ。お前は毎日潜ってるようだけど。」
「まぁ。慣れかもしれないね。」
(いきなり都会の街並みから坑道になるんだから慣れていない人にとっては確かに不思議なのかもしれないない。そもそもまだダンジョンができてから3年だし。)
ここの名古屋低級ダンジョンはモンスターの種類はゴーレムしか出てこない。
ゴーレムの見た目は土のブロックが人の形をとったような感じで耐久度が高い。無機物系統モンスターに共通することだが最大の強みは痛覚による戦闘継続不能がないことなんだ。
「来るよ!」
僕たちの正面からはゴーレムが1体腕を振りかぶって走ってきていた。それを天馬さんがタイミングを合わせて両手持ちのハンマーで叩き返す。勢いよく飛んでいったゴーレムは壁に打ち付けられあっけなく体が砕けて崩れていった。
「春くん、正義くん、お喋りはおしまい。そろそろ今みたいにゴーレムがやってくるよ」
「そう言いつつも天馬さんが俺らより前に倒すよな」
「まぁ私のスキルは『身体能力強化』だからハンマーを使うと威力が高いからね。でも別に器用なわけじゃないからここのゴーレムのような当てやすい的だから相性がいいだけだよ。春くんいつもみたいに回収お願いしてもいいかな?」
「わかりました。ハンマー使えるのすごいですよね。ここは剣士とかだと刃が通らないし刃こぼれもするから意外と天馬さんみたいになんなくゴーレムを倒す人は少ないんですよ」
春は天馬から渡されたゴーレムの魔石を異空間収納にしまう。
「しかしそうか。正義くんも3回目か、ゴーレムの特徴をおさらいしようか」
「お、天馬さん助かる。さすがイケオジだな」
「お、おじさん.....まだ20代なんだけど...。まぁいいや。さっきのゴーレムの動きを見たと思うけど、昔流行ってた小説のように足が遅い訳じゃない。移動速度は人間の走る速度とあまり変わらない」
天馬さんは倒したゴーレムの残骸をハンマーで叩く。
「ただこのように硬さは折り紙付きだ。魔法やスキルが通用しない人は基本的にツルハシやハンマーを持参している。春くん、さっきゴーレムから取り出した魔石貸してくれる?」
「あ、はい」
「これがダンジョンで一番重要なもの。魔石だ。まぁ、身体がとても硬いからここら辺の土のゴーレムは誰も倒さないけどね。ウチには僕の火力や、春くんの収納があるから例外かもしれないけど」
本来ゴーレムを低階層で倒してもあまりお得じゃない。なぜなら、モンスター達は核になっている魔石を持っている、けどゴーレムから魔石を取るのは一苦労で火力もいるし武器も刃こぼれしたりするからだった。
でも、魔石はエネルギー資源として非常に重宝されているんだ。学者の間では魔石はモンスターの動力源と言われていて、体を動かすほどのエネルギーが結晶となっているので小さな物でも大きなエネルギーが得られていると考えられている。
日本にダンジョンが多い分、産出される魔石も多い。少しづつ新たなエネルギー大国として日本は頭角を現し始めているしね。
だから出来るだけ取れるなら取っておくのがお得なんだ。高く買い取って貰えるし、さっき天馬さんが言っていたように僕らには火力があるから、僕がいれば魔石もゴーレムの素材も狩っただけ持ち帰れる。
「ん?」
少しすると先頭を歩いていた天馬さんがいち早く次の敵の接近を察知した。
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