第2話

 そんなわけで受付に探索することを報告しにきたんだけど、なぜか受付の人に捕まってしまった。


「ごめんね、春くん。少し時間貰えるかな」


「ど、どうしたんですか奈々さん」


 僕は何か規約違反でもしてしまったのではないのかと考えてしまい身構える。

 奈々さんはここで初期の頃から受付をしている美人の受付嬢で多くの探索者からの人気がある。


「そう身構えないで。今日声かけたのは探索者ライセンスについてなのよ。初めての更新はガイダンスをしなきゃらならないから時間が欲しいのよ。」

「あの、奈々さん。天馬さん達に話してきてもいいですか?」


「安心して。今日は天馬さんと潜られると思ったので既に天馬さんには先に伝えてあるわ」

「そうだったんですね。そういうことなら大丈夫です」


「では講座を始めますね。今回の講座を受けたら次からは年1度のライセンス更新の書類を出していただくのみで大丈夫になるから」

「わかりました」


 奈々さんはおもむろに受付の下からプレートを出すと説明を始める。


「能力保持者はスキルによる犯罪でなくても刑罰が重くなります。武器等は申請をして、できるだけ民間人を刺激しないような入れ物に入れるなどの対応をしてください。また、銃に関してはダンジョン内であっても所持使用は禁止されてします」

「あ、それ前も気になっていたんですけど、どうして銃だけ特別なんですか? 遠距離攻撃できるスキルだってあるのに」


「それはね。銃は間違って民間人に渡ってしまうと大変なことになってしまうと考えられているからなのよ。良識のある一般人ならまだいいけど、テロや悪いことに使おうとする人間もいるかもしれないの」

「なるほど。あ、話を止めてすみません」


「いいのよ。わからないことはどんどん質問してね。そのための講習でもあるんだから。それじゃあ続けるわね」


 それから奈々さんはスキルや職業についても説明を続けてくれた。

 スキルには5級から1級までの等級に分けられ、能力等級検査は探索者ランク更新の時に一緒に出来る。これはスキルは使用することによって成長していくための処置らしい。


 ギルドでは探索者の方に職業付与を行っている。

 以前、天馬さんに聞いた話だとダンジョンの特殊な産出物を使っているらしい。でも職業によっては特定のスキルを保持していないとなれないものがある。ただ職業のレベルを上げれば上級職へ変更もできるから、上位の探索者がみんな特殊な職業に就いているってわけでもないんだよね。

 例えば、今の探索者ランキングトップは剣士の最上位職の剣豪だったはず。


 探索者にはFからSまでのランクがあって、これは月に一度の判定試験で更新できるんだけど、ランクが上がる度に施設利用割引とか色々の特典を受けれるようになる。


 それとは別にランキング制度っていうのがあってランクインすれば探索者の憧れの的になることができる。ランキング上位の探索者に至っては企業からのスポンサーがつくこともあるらしい。


 ここまで奈々さんの聞いていると探索者にデメリットがないように思うかもしれないけれど、実際のところそうでもない。緊急依頼というギルドが出す依頼があって、これは強制受注だし危険なことも多いんだ。


「---ということで、以上で口頭での講座を終わりますが、他にわからないことはあるかしら」

「いえ、大丈夫です」


「じゃあ、今日も気をつけてダンジョンに行ってきてね。それとそろそろポーターになってから3ヶ月位経ってるから、後で1度転職の受付で確認してみたらどうかしら。職業が解放されていなくてもレベルは上がっているでしょう」

「わかりました。そうしてみます!」


 受付と講座を済ませた僕は天馬さん達の所に戻る。

 長く奈々さんと長く一緒にいたせいか周りからの視線が痛い。確かに可愛らしい方だとは思うけど、僕には手を出す勇気なんて微塵もないんだからそんなに睨まないで欲しい......。


「おっ、更新講座は終わったみたいだな。それじゃあダンジョンに行こうか」

「春、心配はしてないけど探索の準備はすんでるよな」


 2人を見つけて、せっせことダンジョンの入口まで歩く。


「待っててくれてありがとう2人とも、大丈夫だよ」


 さぁ、ダンジョン突入だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る