学校での戯言!
ポロポロ五月雨
学校の戯言!
『かつて北欧神話において栄華を極めた主神オーディンは学校でボカロ曲を流して死んだ』という話がある。
僕も同じ過ちを繰り返す前に誰か教えてくれれば良かったのだが、誰にもバレないようにひっそりと放送委員にリクエストしたのは紛れもない僕でした。と
そういう過去を背負う僕は今日も今日とて放課のチャイム(さっきのオーディンの話と合わせるならさしずめギャラルホルン)が鳴るまで窓際で本を読んで静かに暮らす。
『まぁ正直、この静かな暮らしは嫌いじゃない。むしろ好き♡まである』
「キぃいいいいいラぁあああああああシぃいいいいいいいタぁああああああああああァ!!!!!」
『ドゴォオン!!!』ドアが蹴破られるとともにサヨナラ僕のサイレントライフ。
「おぉい!!おめ昨日のさぁ!テレビのさぁ!あの番組さぁ!?」
「分かったアホ杉、もうちょい静かに話してくれ」
この壊れたスピーカーが喉に張り付いたような男はアホ杉。何故アホ杉かというと
~アホ杉伝説~
『職員室でよぉ!「これビールですぅ」つってリンゴジュース飲んで先公ビビらそうやwww』
『おぉい!杉下ぁ!!お前まさかそれビールじゃないだろうな!?』
『ハハッ!馬鹿めwこれはビールじゃなくてリンゴジュースだww』
『学校じゃリンゴジュースもダメに決まってるだろ!!?』
『え』
~アホ杉伝説 完~
まさに絵に描いたアホっぷりである、流石の僕もこれには涙を禁じ得ない。緩む涙腺をこらえていると
「お!?お前、また二次元の女見てんのかよぉ?」
とアホ杉は僕の持っていたマンガをヒョイと取り上げた。
「オメェこんなん読んでたら彼女できねぇぞ?」
「ふふ、アホ杉。残念だが僕はもうその領域にいないよ」
僕は机の上に乗り立ち、アホ杉を『ビシィ!!』と指さす。
「女性に『奥行き』は不要!!X軸とY軸で構成された彼女たちこそ僕の理想とする女性なのだ!!」
「お~~?」
「そして僕は度重なる修行でついに自身の魂をを二次元に捧げることに成功した!!」
「なるほどぉ?つまり?」
「二次元存在の僕が二次元に彼女を求めて何がダメなんだ!?」
「ダメに決まってんだろ」
後ろからロッカーで後頭部をブッ叩かれる。
「いってぇえええなぁ!?」
「おはよう、夢からは覚めたかい?」
後ろを振り返ると同時に裏拳をカマす。がそれは彼女の頬を掠めることもなく壁に激突した。
「ぎゃあ!!」
「アホ杉、先生がお前を探してたぞ」
「え?おれぇ?」
「寿司屋の件だとよ」
「うへ!?ワンチャン怒られませんように(´;ω;`) 」
「行ったらわかるさ」
アホ杉はその巨体を縮こまらせてショゲショゲしながら教室を出ていった。
「アホ杉何したの?」
「回転寿司の店内でタバコ吸って灰皿が無いって店員にキレた後、回ってるサーモンにそのタバコ押し付けて隣の席の子に『炙りサーモンだよ』つって提供したらしい」
「何でアイツ、ワンチャン怒られないと思ってんだ?」
「さぁ」
こうして教室は僕と彼女『佐藤鈴』の二人になった。ここで気を付けてほしいのは彼女の名前が『佐藤 スズ』ではないという点だ。『佐藤鈴』はあくまで苗字、彼女の名前の方は誰も知らない。噂によると知ると殺されるらしい。ヤバぁ
「まぁいいや、実はお前にも用がある」
「何?」
「お前、秘密喋ってないよな」
「おいおいおいおい、僕の口の堅さを知らないのかい!?」
「拷問されたら爪一枚で全部喋りそうだな」
「そんなわけないだろ、冷や水ぶっかけられた時点で全部喋る」
「チッ」
「舌打ちやめて、普通に傷つく」
僕はダメージを受けたハートを癒すため机に腰を下ろした。
「まぁマジな話、まだ喋ってないよ」
「まだ?」
「まだぁ」
そう言うと佐藤鈴は「フン」と鼻を鳴らして教室を出た。
「はぁ~あ、まったく野蛮な」
ちなみに秘密は『もう』喋った。
秘密と言うのは彼女のポエム集のパスワード。今朝のうちにアホ杉にメールで『パスワードは英語でアリス 0821な』って送ったから今頃はヒヒヒw しかしアリスとは奴も中々可愛らしいじゃないか、ペンネームかな?
『まったく奴の赤面が楽しみだぜ!』
プルルルル!!『お、さっそく』
「はいもしもし!」
「おうキラシタ?オメェこれパスワードちげぇぞ」
「うぇ?」
「英語でアリス0821だろ?開かねぇ開かねぇ」
「ウソだろおい」
「何がウソだって?」
「げ」
後ろからチョークスリーパーを決められ、苦しくて顔が赤面する。
「やっぱりな。お前はそういう奴だと思ったよ」
「ちょ、ぎぶぶぶぶ」
「問答無用」
ゴキィ!!僕は首を折られて気絶した
目が覚めるとオオカミの群れの上にロープで固定されていた。
「おはよう、夢からは覚めたかい?」
「ぬぬぬ、佐藤鈴」
「愚か者め、お前はオオカミに食い殺してもらう。最後に言い残すことはあるか?」
「くっ、ポエム集のパスワードは確かにあっていたハズ。一体なぜ?」
「ふ、お前アホ杉に何とメールした?」
「? 『パスワードは英語でアリス0821な』と」
「お前はアホ杉をなめ過ぎだ、アリスの綴りは?」
「ALICEだろ?」
「これを見ろ、そして死ね」
ロープが切られた刹那、そのポエム集の端末には確かに『ARISU 0821』と入力されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます