九話【前夜祭】

呼ばれたギネアとキューテッド達が村に帰ってくる。


丁度、戻る所だったらしい。


「惣一郎様、奴らを探し出す案がおありだとか」


「ああ、急がして済まない。キューテッド、村のみんなと奴隷契約を結ぶ準備を頼む」


「全員とですか!」


広場に集まる村人を見渡し、ギネアの横で驚くキューテッドの顔色が悪くなる。


契約にもそこそこ魔力を使う。


先にキューテッドと契約する必要がありそうだ。


惣一郎は頭に思い浮かぶウンディーネから教わった陣を紙に書き出し、ミネアとセリーヌに広場全体に描く様に頼む。


バタバタしていると、ツナマヨ達が戦闘準備を整えて戻ってくる。


弁慶やミコも気合い十分といったご様子。


「惣一郎殿、ホルスタインに刀をやってくれないか。彼女は槌より刀が向いておる」


訓練を見ていたツナマヨがそう思うなら間違いない。


「わかった用意しておく」


惣一郎はベンゾウをはじめ、武器を持って戦う準備をするみんなに頭を下げる。


「奴隷契約を結べば、俺がここを出る訳にはいかなくなるんだ。みんなにだけ戦わせる事になって本当に申し訳ない!」


惣一郎がユグポンを出れば奴隷契約で近くに強制転移させてしまう為、戦闘に参加出来ないのだ。


「旦那様が出る幕じゃないってだけだ!」


「そんな事気にしないで下さい!」


「旦那が大将なんだ、ここででんと構えて待ってな!」


済まない……




村のドワーフ達が魔導具を配り始め、ミネアがセリーヌとローズを手伝わせ、急ピッチで陣を描いて行く。


ドラミが精霊にも魔力を借りようと呼び出し、イワオと備える。


ババも子供達と手を繋ぎ、ジルや元ルドの村人達と広場を囲む。


次々と順番に契約を結び、疲れた顔になって行くキューテッドに栄養ドリンクを渡す。


改めて村人達と向き合う惣一郎。


いつの間にか増えた大所帯に、責任がのしかかる。


ピノが最後まで契約に反対していたが、スワロに説得され渋々契約を交わす頃には、夜中になっていた。


気付けばメイド達が食べ物を配り歩き、異世界の料理で精霊を接待するドラミ。


集中力が切れた子供達がはしゃぎまわり、クロと遊んでいる。


ちょっとした祭りの様な雰囲気になっていた。


戦いを前に和む惣一郎の前に、ドラミがやって来る。


「惣一郎……」


ドラミは真剣な表情で話し始める。


「ユグポンが惣一郎に伝えろ言うてる」


「どうした?」


「今回の作戦で使う魔力は次元を開くより大きな規模や。そのせいで今繋がっとるベンゾウ達の世界との次元を維持する事が出来なくなるそうや」


「そうか…… どのぐらい保つ?」


「半日やそこらや……」


「また繋ぐのに時間がかかるのか……」


「アホ、世界も言うとったやろ。もう向こうに次元が繋がる事はないて」


「みんなが戻ったらって話しだろ?」


「ちゃう、今繋がってる次元のトンネルが最後ちゅう意味や!」


今回の作戦を発動すれば、キシルとネネルの2人を見つけ出し倒し、魔女を完全体にして力を抜き次元に投げ込み、ベンゾウ達を無事送り出すまでのタイムリミットが、あと半日って事か……


そこに近くで聞いていたツナマヨが、


「そうか…… もう帰らねばならぬか」


「ツナマヨ……」


「ベンゾウ殿の手紙で応援に来たが、貴重な体験をさせてもらった…… 惣一郎殿。其方には礼も言えず死に別れたのに、こうしてまた会えて嬉しかったぞ」


「ツナマヨ…… こっちこそ助かったよ……!」


「ふたりとは話したのか?」


「いや……」


「ならば戦闘が始まる前に、話すのだな」


惣一郎は奥で楽しそうに何かを両手に持って食べている、ベンゾウを見つめる……







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