二十話【魔女の足】
鼻を赤くし、涙を堪える弁慶。
「すまん…… 旦那様がくれた侃護斧が……」
地面に落ちた二つの侃護斧を見下ろし、肩を震わせる。
勇者の置き土産である戦斧も、世界を渡った武器なのだろう。
異世界の硬い金属から作った武器と、武器として世界を渡った差が出たのかも知れない。
惣一郎はそのぐらいに考えていたが、弁慶にとっては、惣一郎に貰った最高の武器として、負けるとは思っても見なかったのだろう……
その武器を扱う自分の所為だと、自分を責めていた。
「弁慶、これは武器の差だ。弁慶じゃ無く俺の武器が負けたんだ。自分を責め…」
「ご主人様〜」
なんだよ!
弁慶が投げ置いた勇者の戦斧を、かがみ込んで見ているベンゾウが話しかける。
「これ國家みたいに中身入ってるよ」
赤い地面に横たわる大きな戦斧。
ベンゾウの言う中身が惣一郎にはピンと来ないが、近付くと存在感が他とは違う気もする。
そこにツナマヨが、
「いつまで落ち込んでいる! まだ敵陣だぞ」
確かにそんな場合では無いかも知れない。
「戦いの中武器を失えば、敵の武器を奪い戦うまでだ。思い入れがあるのは分かるが、気を引き締めろ!」
ツナマヨの一喝で、鼻を啜る弁慶。
侃護斧を拾いポーチに仕舞う。
「そうだな… すまん!」
後で直せるかドワーフ達に相談してみるか……
そう思いながら惣一郎が、地面の戦斧を拾おうと手を伸ばす。
重!
地面との隙間に指すら入らない!
幻腕を出し両手で持ち上げようと踏ん張るが、全く上がらなかった。
ケラケラケラ。
しゃがんだまま笑うベンゾウ。
その背後から手を伸ばす弁慶が、戦斧を軽く拾い上げる。
マジか……
「ん、どうした旦那様?」
「いや…… なんでも無い。似合うぞ、ソレ!」
少し照れながら赤い鼻の弁慶が戦斧を振り回す。
「少し軽いが、これで我慢するか!」
軽いんだ……
惣一郎はゲルドマ達の遺体を収納し、また出す。
魔女の目は落ちなかった。
「コイツらは操られて無い様だな……」
ひとり確認する惣一郎を置き去りに、ツナマヨ達が先に進み始めていた。
広い空洞の奥に見える扉を目指し。
その頃、ユグポンの中で待機するミネアが驚きの表情で、床に置かれた御神体を見ていた。
「ミ、ミネアさん、コレは……」
ブラギノールも驚きながら、ミネアに話しかける。
布に巻かれた御神体から、飛び出す様に生えている右脚。
「生えたのかしら……」
小さい包みから飛び出す干からびた足。
子供の足より小さく蟲の様な脚であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます