八話【再会スワロ】
木の上を転移する惣一郎。
少し行くと急に転移が発動しなくなり、勢いそのまま木から落ちるのを、慌てて浮く理喪棍に捕まりベンゾウと地面に降りる。
「なっ、なんだ! 急に転移が出来なくなったぞ」
「飛べるのにね〜」
サーチも発動している……
転移だけ?
少し考える惣一郎が、飛んで進む事にする。
羽より軽いベンゾウが器用に理喪棍の上に立ち、前方に集落が見えて来た事を伝える。
惣一郎のサーチには間違いなく、スワロの反応があった。
「スワロだ! スワロがいるぞ」
「ご主人様、嫌な匂いもするよ! ここまで匂うよ」
反応はスワロひとりなのだが……
「いた! 近くになんか擬態しているぞ!」
そのまま集落の中に飛んで行く惣一郎。
降りると直ぐ小刀を出すベンゾウ。
そのままの勢いで枝で組まれた古屋の中に入って行く惣一郎が声を上げる!
「スワロ!」
「へっ!」
床に座り込み呆けていたスワロが驚く。
「ああぁ、あるじ〜」
状況がわからないふたりが、夢でも見ている様な感じの中で、久しぶりの再会を果たす。
床に座ったまま泣き出すスワロを抱きしめる惣一郎。
床には大きな血痕があった。
「何があった、スワロ!」
「あるじ〜」
泣きじゃくるスワロから聞き出すのは難しいか……
「代わりにお前が答えろ!」
っと、古屋の外から鉄球に押し出された壁から人の形を模った壁が床に転がる。
慌てて上体を起こす壁模様の何か。
その首元をベンゾウの小刀が突き付けられていた。
「クッ!」
「隠れて何やってるんだ?」
動けない何かがゆっくりと縦に割れ、全身を包んでいた壁模様の羽を広げると、中から蟲が混ざる裸の熟女が現れる。
「お!」
「なっ、なんだ変身したぞ!」
「ご主人様見ちゃダメ!」
突き付けた小刀が放つ、異様なオーラを大きくする。
「わ、わたしは……」
「あっ! 思い出した!」
蟲の言葉を遮り、大声を出すスワロ。
「キッドだ! 奴はどこだ!」
「キッド? キッドがいたのか!」
「ああ、アイツ魔女崇拝者達に復讐を企んでいたのだ。私も用が済んだのか逃してくれたのだが、ここで鳥が現れてからの記憶が……」
この血はキッドのなのか?
「お前は何をしてた! のですかお姉さん……」
「見ちゃダメって言ったでしょ!」
「わ、私は…… そのキッドを追って……」
「キッドを殺したのか?」
「いや…… 鳥を……」
話が見えて来ない……
まぁ、怯え様からこの上位種は、戦闘タイプではないのかも知れない。
「鳥ってもしかして鳥人か? 翼族の」
「そうだ…… 私の擬態に気付いたのでな……」
「そうだ! 思い出した!」
またか……
「追手を撒くとか言っていたぞキッドが!」
なるほど、ではキッドはスワロを逃す為に……
「そうだ!」
今度は何よ……
「御神体を隠せと……」
御神体?
すると全員の目が、床に転がる布に巻かれた物に集まる……
その一瞬の隙をついて、壁の穴から逃げようとする熟女な上位種。
壁の外にはすでにベンゾウが立っており、上位種は一歩二歩とゆっくり歩きながらバラバラに崩れて行った。
コイツ…… 何カップだったんだ……
真剣な顔でバラバラの遺体を見る惣一郎。
ベンゾウだけが疑いの目で、惣一郎を見ていた……
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