十九話【パテマ傭兵組合】

復興が思う様に進まないビルナットに来てから3日後、朝から厳つい傭兵風の男達が転移屋から現れる。


たまたま町の様子を見に来ていたタイガとジャニーが立ち止まる。


そのふたりの白いローブ姿に、大柄の男が話しかける。


「勇者の手の者か? 我々はクリゴウから来たパテマ傭兵組合と言う。噂に聞く勇者の力になりたくて行方をずっと追っていたのだが、偶然近くでここビルナットに来ていると聞いて来た次第だ」


フードを目深にかぶる筋肉質な褐色の肌の男。


「パテマ傭兵組合って言ったら傭兵団の中じゃ一番の所じゃないか! こりゃ凄い、ジャニー! 旦那を呼んできてくれ」


頷くジャニーが、ユグポンへと戻って行く。


タイガが有名な傭兵団を前に、子供の様な目で大柄の男を見る。


「俺は勇者騎士団のタイガだ。今は戦力が足らず困っていたから旦那も喜ぶだろう」


「力になれて私も嬉しいよ。パテマ傭兵組合の団長を務めているゲルドマだ。よろしく頼む」


団長を名乗るゲルドマ。


大柄なタイガより頭一つ大きい男の後ろに、8人の傭兵がゲルドマの指示を待つ様に姿勢良く立っている。


訓練された戦士に、今後自分も学ぶ事が多そうだと、身を引き締めるタイガだった。


「勇者の騎士とは、傭兵の様な者か? 何人ぐらいいるのだ?」


「まだ出来たばかりでな、8人そこらだ。オタクらと変わらないな」


「いや今日来たのは私の隊だけだ。パテマ傭兵組合には57人の戦士がいる」


「ほぉ、流石だ」


感心するタイガの背後から、ジャニーに呼ばれた惣一郎がベンゾウとふたり近づいて来ていた。


呼びに行ったジャニーの姿は無い。


「待たせた様だな、すまんすまん」


軽い言葉の割に目が笑ってない惣一郎。


「いえ、然程では…… 初めましてパテマ傭兵組合のゲルドマと言う」


「パテマ? 魔女崇拝のグルミターナだろ?」


惣一郎の言葉に一瞬で凍り付く空気。


惣一郎の横に居たはずのベンゾウの姿は消えていた。


「だ、旦那……」


間に挟まれ理解が遅れるタイガ。


ゲルドマがゆっくりとフードをめくる。


「ご存じでしたか」


現れた顔は、金髪のダークエルフ。


体格に似合う屈強な面持ちの顔だった。


「ああ、ぷんぷん匂うよ! なぁベンゾウ」


白く燃える小刀を握るベンゾウが、いつの間にかゲルドマ達の背後で構えていた。


チラッと後ろを気にするゲルドマ。


「なるほど、流石は勇者……」


ブオン! と鳴る風切り音の次の瞬間!


惣一郎が幻腕で掴むタイガを後ろに放り投げる!


ゲルドマの手には振り抜かれた大きな戦斧が握られていた。


惣一郎がタイガを投げ飛ばさなければ、真っ二つになっていただろう。


転がるタイガが地面を蹴り戦闘体制に入ると、ゴゴ達が遅れて現れ、武器を構える。


「まさか、傭兵団のトップがグルミターナの一員だったとはな」


「逆さ! 我らグルミターナが女神の元、この世界を一つにする為に作った組織なのだ」


戦斧を持ち変えるゲルドマ。


後ろではすでにベンゾウと傭兵団達が始めていた!


七対一でもベンゾウが勝つと思っていた惣一郎。


ゲルドマから目を離さない!


だが、あのベンゾウが、傭兵団のコンビネーションに応戦一方であった!







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