十七話【落とし物】

ユグポンの村に戻る惣一郎達を、ギネアが迎える。


「惣一郎様、外に翼族の者達を待機させております」


「わかった。直ぐに会おう」


夕食の準備に賑わう食堂を抜け、ギネアが繋いだ扉に向かう。


場所はイチの町、手前の森。


ギネアを先頭に扉をくぐる惣一郎とベンゾウ。


薄暗い森の中で焚き火を囲み、談笑していたブラギノールが気付く。


「惣一郎さん、早かったなですね。ご紹介します。こちらが翼族の族長トトリさんです」


クンクンと匂いを嗅ぐベンゾウが、大丈夫っと惣一郎を見る。


「は、初めまして、惣一郎と言います。急に無理なお願いをして申し訳ない」


「事情はブンダールに聞いた。我々も勇者の力になれるなら、いくらでも手を貸そう」


「ブラギノールです。惣一郎さん、みなさん心良く大陸までの案内を引き受けて下さいました」


「それに惣一郎様。彼等は奴らのアジトらしい情報も持っておりました」


ギネアの補足情報よりも、惣一郎はトトリの後ろの鳥人が腕に光らせる物に目を奪われる。


「それを何処で!」


「ご主人様、あれって!」


惣一郎の視線に、鳥人全員が後ろを振り返る。


「いやあんただ! その腕の飾りを何処で拾ったんだ」


「これか? これは母の形見だ」


「お前親いたっけ?」


「正直に答えよ[マジリ]!」


「ああ、思い出した集落の近くで拾ったんだ…… 多分……」


駆け寄る惣一郎が鳥人の左腕を掴む。


「間違いない。攫われた仲間の物だ! すまんが返してくれないか? 大事な物なんだ」


スワロのレーテウルだった。


「こ、これは気に入ってるんだ! 俺が拾ったんだ、もう俺のだぞ! いくら勇者といえ……」


惣一郎はマジリの腰にぶら下がる短剣を見て、ネットでサバイバルナイフを購入する。


「これと交換では?」


「勿論! 素晴らしい短剣だな!」


直ぐにレーテウルを受け取る惣一郎に、周りの鳥人達も、


「俺もこれ拾ったぞ!」


「これも同じ日に拾った物だ」


鳥の習性なのか光る物を集めてるのだろうか、みんながガラクタを見せてくる。


「やめぬか、翼族の誇りは無いのかお前達! すまんな勇者よ。俺のこのガラス玉が一番綺麗に光るぞ」


やっぱ嫌いかも……


「大陸までの道案内と彼等の護衛を頼む報酬として全員に武器を渡そう。だから、ガラクタを仕舞ってくれ」


大喜びの翼族達。


地下道には魔物も出ると言うし、前金にはなるが武器を渡しておこうと、惣一郎は全員に武器を渡していく。


狭い洞窟での戦闘を考えると槍は不利に思うが、ギネアの持つ薙刀に鳥人達の多くが興味を示す。


高くついたが、危険を考えると仕方ない。


27人全員に薙刀を配りながら首元を確認させてもらうと、受け取った者から次々と、ギネアに教えを乞い始める。


まんざらでも無いギネアに、やや不安が残る惣一郎だった。


慣れた武器じゃ無くて大丈夫なのだろうか?







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