十五話【翼族のトトリ】

森の中を進む、ギネアとブラギノール。


目指す町はまだ遠かった。


「そうでしたか、惣一郎さんに……」


「ああ、恩を返さねばならんと言うのに、俺のせいで大切な仲間をな……」


「いえ、ギネアさんのせいでは、ですがその魔女崇拝者とは…… そんな恐ろしい連中だったのですね。過激な女神信仰って位に思っておりましたが……」


「魔女が生きていた事も驚きだ」


世間話をしながら進むギネア達。


深い森の中を進んでいくと、突然空から黒い影が現れる!


薙刀を構えるギネア!


「待って下さい! あれは……」


森の中、木の高さで飛ぶ黒い影が、枝の上に止まりこちらを伺う!


もしかして、ブラギノール氏か?」


嘴を動かし羽根をたたむ影。


「おお、やはり翼族の皆さん!」


ギネアの薙刀を下ろす様に、手を添えるブラギノール。


「今ちょうど、皆さんの所に向かっていたのですよ! まさかここで会えるとは。トトリさんはおりますか?」


すると枝の上の一羽が声を上げる。


「族長!」


陽を背に一際大きな黒い影が、ブラギノールの前に降り立つ。


「久しいなブライアンジョー!」


「ブラギノールです。お久しぶりですトトリさん! 皆さんお変わりありませんか?」


「ああ、健在だ。だが嫌な匂いがこちらにも広がり出したのでな、さらに南に移動を始めた所なのだ」


「嫌な匂い?」


「ああ、大陸で嗅ぐ危機を知らせる匂いだ。ブライダルショーはなぜこんな場所に?」


「ブラギノールです。実は折り入ってお願いが御座いまして……」


ブラギノールが族長トトリに事情を話始める。


鳥と爬虫類の関係からか、警戒するギネアを鳥人達が、木の上から目を光らせ見つめていた。






「なるほど…… それで大陸に行きたいと」


「はい……」


すると上の枝から降りて来た別の鳥人が、トトリの背後に立つ。


「族長、もしやあのキャットって男が言っていた事では?」


「ふむ……」


「キャット?」


「ふむ、時折我が集落に立ち寄る旅人でな、森の奥の洞窟に良からぬ者達が住み着いたと警告して来たのだ。決して近付くなと。我々も危機を知らせる匂いを感じたのものでな、森にはそれ以降踏み入れる事はしなかったのだが……」


「ギネアさん! おそらくそこが……」


「あっああ、きっと奴らのアジトだろう……」


冷や汗が止まらないギネア。


木の上には涎を垂らしギネアを凝視する影が、無数見て取れた。


「トトリさん、この方は勇者様のお仲間です! 美味しくはないかと……」


「はっはははは! 流石に食べはせん! ただ本能でな…… 良かろう協力しようではないか! 時期には早いが大陸に案内しよう、我らの恩人であるブリリアントたっての頼みだ」


「ブラギノールです」


「族長! ですが」


「[セセリ]よ! 我々が長年生きて来れたのは、この危機感知能力のおかげだ! だがそれは逃げているのと同じ事だとは思わんか?」


「族長、それの何処が行けないのですか!」


「私は常々思っておったのだ。先祖より受け継いだこの能力。本当に危機から逃げる為のものなのかと…… 危機が迫る事が分かれば備えればいい。逃げず向き合う為の物ではないかとな」


「「「 族長! 」」」


『族長あれ、毎回言うよな?』


『ああ、結局また逃げるんだぞ…』



ともあれ、運良く鳥人と合流したギネア達。


その日は夜を待ってユグポンに帰り、惣一郎にトトリ達を紹介すると話す、ギネアとブラギノールだった。







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