五話【ジバクアリ】

蟻はサイズも小ぶりで、しかも槍を刺すと簡単に自爆する。


村の中の蟻はあっさりと、惣一郎とベンゾウに倒される。


だが、崩れた外壁まで行くと遠くに、地面を覆い尽くす程の大群を目にする惣一郎。


さっきのは斥候だったのか!


そして臭い!


外壁も自爆で壊したのか、刺激臭を放っていた。


鼻を摘んだベンゾウが鼻声で、


「ご主人様、いつものちょうだい」


っと、鼻声で手を出す。


ベンゾウにはキツイ様だ。


惣一郎は置き型の消臭剤をベンゾウの首にかけ、コールでドラミを呼ぶ!


真っ直ぐ向かってくる大群を見ながら。


「何や惣一郎。ばらけとった村人はみんな回収したで…… って何やあの数! 本番はこれからかい!」


「ああドラミ、すまんが外壁を補強してくれ! 奴ら自爆してこんな外壁じゃ保たないんだ」


杖を構え、集中するドラミ。


外壁に巻き付く様に地面から生えてくる蔓が、太く外壁を補強して行くと、連絡を受け遅れて駆け付けたゴゴ達が現れる!


「ハク、良い所に! 例のスキルを頼む、毒をあの大群に投げ込むぞ」


そう言うと惣一郎は、地面に蟻用の殺虫剤を大量に出す。


ハクが作り出す空気の塊に向けて、みんなで殺虫剤を噴射する。


ベンゾウは缶ごと切り中身を撒き散らす。


毒を巻き込み膨れ上がる、空気の塊。


向かって来る大群に向け、崩れた外壁の隙間からその丸い空気の塊が放たれる!


スピードは無いが、真っ直ぐ進む空気の塊。


「旦那様! ここまでが限界です!」


「わかった! もう少し我慢しろ、もっと引き付けるんだ」


ワラワラと折り重なりながら、赤黒い絨毯が迫って来る!


惣一郎は上空に、暇さえあれば作っていた槍を無数に浮かせ、タイミングを見計らう。


「今だ!」


大群の中心で破裂する塊は、毒を風に乗せ四方に拡散する!


その爆風に吹き飛ぶ蟻。


外壁の隙間には、ゴゴとジジが盾を構える!


「やったか!」


ひっくり返った蟻の脚が止まると急に破裂する!


その破裂した毒に反応して別の蟻が破裂する!


連鎖的に広がる爆発が、大群の中心から広がり爆竹の様な音を出す!


近くまで来ていた蟻が爆けると、ゴゴ達の盾に刺激臭のする体の一部がドンっとあたる。


「危なかった…… ひきつけ過ぎてたら村を巻き込んでたな……」


連鎖的に自爆した蟻は、目の前の森を滅茶苦茶にし、刺激臭を放っていた。


みんなその惨状を、ただ呆然と見ていた。


ジジ、ジジジジ……


「惣一郎…… 何やあれ!」


「ああ、上位種だ」


後方にいて、軽傷で済んだのだろう人型の蟻。


怒りを露わに真っ直ぐ惣一郎達めがけ、泡を口元に見せ走って来る!


盾を構え直すゴゴとジジ。


ハクはさっきの爆風で、力を使い果たしたのか、顔面蒼白、満身創痍。


ベンゾウがステップを踏み始めると、惣一郎が上げた右手に持つ理喪棍を振り下ろす!


降り注ぐ百近い金属の槍。


その槍の雨に削られる様に、近づく度に四肢を失う蟻の上位種。


片腕と上半身だけになった蟻は、黒い目で這う様に、まだ進もうと地面を削る。


そこに最後の槍一本が、その頭部に刺さる。


荒地となった森に咲く、無数の金属の槍。


惣一郎達は自爆を恐れ、動けずにいたが、上位種は自爆しなかった……


「ベンゾウの番なのに……」







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る