五話【女神崇拝】
老婆の提案に、上手く誘導されてる様で腑に落ちない惣一郎。
ババと別れた後もひとり、お茶を飲み畑仕事をする村人を見ていた。
今もなお、生き続ける呪い。
惣一郎の役目は、蟲の数を減らす事。
向こうの世界に溢れない様に……
だがまさか、魔女の呪いで今もなお、蟲が生まれ続けていると言う老婆の話は、どこまで信用出来るモノなのか……
ドラミに聞いてみるか。
視線の先で、アメリ達と楽しそうに畑仕事を手伝うドラミを見ながら、惣一郎はお茶を啜る。
「なんや、暇そうやな惣一郎」
野菜を抱え、惣一郎に話しかけてくるドラミ。
綺麗な髪は、さすが地球産のヘアカラーを使ったからか、根元まで黒々と艶のある黒髪であった。
テーブルに野菜の乗った籠を置き、お茶を催促するドラミ。
惣一郎も当たり前の様に、お茶を淹れる。
「なぁ、西に大昔の遺跡があるんだって?」
「そなんか? ズズズ〜」
「その辺りに大昔、魔女と一緒に戦ったダークエルフが、今も生き続けているそうなんだが」
「アホか、どんだけ昔の話や思おとんねん!」
「だよな、精霊より長生きって事だもんな」
「気になるんか?」
「嘘には思えなかったが、噂話だしな」
「西言うたか?」
「ああ」
西に顔を向け、遠くを見るドラミ。
黙ってれば美人なんだがな……
ガタ!っと驚き、お茶をこぼすドラミ。
「誰や、それ言うたん誰や!」
やっぱなんかあるのかな?
「先日助けた子連れで、ツリーハウスに閉じ込められてたババだ」
「惣一郎…… 場所、変えよか……」
驚くドラミだったが、すぐにいつものドラミに戻る。
惣一郎の住むリビングに戻ると、ミネア達が丁度、両手に大荷物を抱え帰ってきた。
「ただいま、ご主人様!」
ソファーに荷物を投げ捨て、飛びつくベンゾウ。
羽根の様に軽くなっていたベンゾウが惣一郎の首にぶら下がる。
「主人よ、今戻ったぞ!」
「ただいま戻りました」
「おかえり。お目当ての物は買えたか?」
「はい!」
丁度いいかと惣一郎は、昼食の準備を始める。
まだ壁に穴の空いたキッチンで、下拵えを済ませてある豚肉を取り出し、焼き始める。
ジンジャーポークソテー。
惣一郎が言うまでもなく、皆率先してテーブルに茶碗を並べ始める。
穴の下の食堂でもいい匂いが、漂う時間だった。
「遺跡? 大昔の遺跡があるのか?」
「ああ」
食事をしながら本題に入る。
「なるほど、あのご老人がそんな事を……」
「長生きな人もいるんだね! モグモグ」
「惣一郎。惣一郎は知らんかも知れんが、大昔から魔女を崇拝する奴らがおんねん」
「女神崇拝ですね」
「女神崇拝?」
「はい、魔女を女神と崇拝し信仰する者達です。目立った活動はしませんが、大昔に魔女と共に戦った生き残りが各地で教えを広げたとされていましたが、敗れた側ゆえ密教として、今もわずかに残っていると聞きます」
なるほど……
「でも、ババ達は森のエルフじゃないぞ?」
「確かに信仰する者に、森エルフは多かったですが、種族に決まりはありません。勇者が魔女を倒した世で、不遇の立場から裏返る者は少なく無かったそうです」
「まっ大昔の話や! まさかまだ残ってるとは」
「ベンゾウ殿! それは私の肉だ!」
「ババが住んでた村がそうだったって事か……」
「魔女崇拝の奴らは、蟲と共に生きるとされてたらしいねん。魔女が生み出したもんやからな! なのにその蟲に村が襲われ大切な人を奪われた。きっと裏切られた思うたんやろな〜」
「そう言う事か…… 少し見えて来たわ」
「だからベンゾウ殿! 自分のを食べればいいだろ! なぜ私の皿から取るのだ!」
「遺跡のアレも、その村が守って来たんやろ! だが裏切られた怨みで惣一郎に話したんちゃうか?」
「で、結局何があるんだ? その遺跡には」
「蟲や。長生きの人が混じった蟲や」
「俺に倒せって事か……」
「せやろな…… ちょ、アホ! それはウチのや!」
「ベンゾウさん、ダメですよ。人のお皿から取っては」
「普通に頼めばいいのに……」
「それは無理かと…… 女神崇拝は密教です。まして勇者である惣一郎様に打ち明ければ、ここに居られなくなると思ったのでは?」
「ご主人様、それちょうだい?」
普通に頼みやがった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます