二十一話【変化】

「ハクの圧縮スキルをか?」


「ああ、さっきベンゾウ殿と契約をした時に、急に理解した気がしてな、他にも色々と魔法が使える気がするんだ。集中すると、こう…… 頭の中に陣が思い浮かんで来る感じだ」


何それチートじゃん!


「でも、ハクのは魔法じゃ無くスキルだぞ?」


「仕組みは一緒なのだ…… なんて言うか…… 分からん、やってみよう!」


不思議な話だったが、惣一郎には分からなくもなかった。


惣一郎自身、さっきの契約から明らかに、自分に変化があった覚えがある。


上手く説明が出来ないが……


「ベンゾウもね、凄いんだよ! 魔力だけじゃなくって、なんかこう…… んと……」


やはり3人と繋がった事で、みんなに変化があった様だ。


「わかったスワロ! 試して見よう。入り口まで飛ぶぞ」


「いや主人よ、ここでいい」


杖を構えるスワロの前に風が集まりだし、小さな圧縮された空気の球が出来て行く。


驚く惣一郎は直ぐに蜂用のスプレーを大量に出し、穴を開け始める。


吹き出す中身が、その球に吸われていく。


白く色を変える球体は、バスケットボール程の大きさになり、回っている。


するとスワロが杖で操作し、球体が洞窟の中へとふわふわ浮いて行く。


「なるほど、動かせるのか……」


「主人よ、サーチを!」


「えっ、ああ。えっとそのまま前に降って……」


「いや主人よ、私にも見える!」


マジか……


「着いた! 行くぞ」


やや遅れて洞窟の入り口から突風が吹き出す!


「おお〜 苦しんでるね〜」


あら、ベンゾウにも見えるのね!


だが苦しんではいるが、倒れる蟲はいない。


突風が止むと入口に瞬間移動する3人。


「来るぞ!」


ふたりが並べる程の大きさの洞窟の奥から、カサカサと慌ただしい音が響いてくる。


「じゃ、今度はベンゾウね!」


銀髪をなびかせ、前に出るベンゾウ。


その両手から吹き出す様に青白い炎が現れると、燃える手の中に、2本の白い小刀が握られていた。


「えっ、それって……」


「聖なる魔力…… 主人の魔力だ!」


おいおい、浄化されないだろうな…… 國家達。


壁に張り付きながら、泡を吐く人型の黒い蜂が、重力を無視して迫って来る。


ゆっくりと前に出るベンゾウが、ふわっと消える。


すでに残像だった。


ユラユラと奥に青白い光が続くと、向かって来る全ての蜂は、首が落とされ、惣一郎の前に転がる。


「えっと…… 俺にも見えるんだが…… アイツの動きが……」


微笑むスワロが惣一郎の背中をそっと押す。


死骸の山の中を、回収しながら奥へと進んで行くと、広がる空洞に出る。


村ほどの大きな空間に、天井からぶら下がる巨大な蜂の巣。


その大きな巣を眺め、立っているベンゾウ。


「上位種を雑魚扱いかよ! 凄いな…」


周りに広がる死骸を目に惣一郎が呟く。


「ご主人様、あの中にまだ5匹いる」


惣一郎もサーチで気付いていた。


しかも1匹は、特別大きい。


巣の中で毒の影響が少なかったのか、お元気そうで……


するとスワロからまたも、青白い炎が吹き出し、杖を向けるだけで、白い稲妻が巣へと走る!


お前もかよ!っと、慌てて耳を塞ぐ惣一郎!


だが、いつもの爆音はなかった。


弾ける様に崩れ、燃え上がる蜂の巣。


その青い炎の中から、立ち上がる4匹の蟲。


後ろには、大きな腹部を引きずる人型では無い大きな蜂の姿が見えた。


その脚には、人だろう残骸が抱え込まれていた。


食事中だったのか?


しかも、お怒りの様です。


盾を2枚出し、タングステンの槍を何本も宙に浮かせる惣一郎。


ベンゾウはすでに、左の2匹と交戦中。


ベンゾウの速さについて行ける蜂に驚き、気を引き締める惣一郎。


その一瞬!


杖を構えるスワロめがけ、勢いよく迫る1匹に、惣一郎が盾を飛ばし壁に押し付ける!


同時に、残りの1匹がその惣一郎に迫る!


スワロが光剣を出し、壁に押し付けられた蜂を串刺しにすると、槍が降る中をすり抜けながら迫る蜂を、幻腕で殴りつける!


顎を砕き、よろける蜂の首が落ちる。


その後ろには、ベンゾウが立っている。


向こうの2匹も頭を失い、倒れていた。


キシャーーーーーー!


巨大な腹部が重く、身動き出来ない大きな蜂。


残りはこの女王蜂だけだった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る