十五話【初陣】

自分の魔力の性質を初めて知った惣一郎。


知った所で、何が変わる訳でも無いのだが……


そこにセリーナが現れる。


「旦那様、言われた通りギネアにコールしておきました」


「ありがとセリーナ! 心配してるかも知れないからな。セリーナも昼食べていきな」


嬉しそうにミネアの横に座るセリーナ。


綺麗なエルフの姉妹が並ぶと絵になる。


ニコニコ笑顔を向ける惣一郎。


スワロから黒い炎が薄っすら見える。


まさか、嫉妬が魔力の糧じゃないよねスワロ?




先に昼食を終える惣一郎は、ひとり風呂に入る。


見晴らしの良い森の景色に、温まり癒される惣一郎。


檜の香りが心を浄化していく。


「ふぁ〜 生き返る……」


「本当に生き返ってよかったね! ご主人様」


腹を膨らましたベンゾウが、湯船に入ってくる。


そこまで食うか?


妊婦の様だ……


コイツの食欲も謎の一つである。


「久しぶりだな〜 ベンゾウとこうして入る風呂は」


「うん、ベンゾウね、またご主人様とこうしてお風呂に入れるの凄く嬉しい!」


惣一郎がいなくなった後、風呂にも入れずにいたのだろうか……


覚えた贅沢を失う辛さは、知らない者より我慢を強いられる。


「ご主人様……」


「ん?」


「まだお礼言ってなかったね」


「お礼?」


「ベンゾウを、身を、命を投げ出し助けてくれた事…… ありがとう」


「そんな事、気にすんな! 当たり前だろ」


「違うの! それでも、嬉しいけどそれでも、もう無茶しないで! ベンゾウは、自分が死ぬよりご主人様が死ぬ方が辛いから」


「それは俺も同じだ! 俺だって自分よりベンゾウが死ぬ方が嫌だからな。同じ事があれば同じ事をすると思う」


「ご主人様…… ならベンゾウは強くなる! ご主人様に心配かけない様、もっと強く!」


ああ…… そうだな、俺も強くならねば。


広がる森を見ながらふたりは、のぼせるまで風呂に入っていた。








翌朝、武器を手に気合十分の騎士達が中庭で待っていた。


村人みんなに見送られる騎士達。


奥の訓練場にはキッドひとりが、腕立て伏せをしていた。


そこに、あくびをしながら現れる惣一郎。


ここまで大事になるとは、思ってもいなかった様で驚く。


ノリノリのドラミが旗を掲げ、声を上げる!


「勇者騎士団の初陣や、気張りや!」


「「「「 おおおお! 」」」」


「う、うん。じゃ行こうか……」


全身プロテクターのゴゴとジジが、透明な樹脂の盾を前に歩き始める。


その後を惣一郎とベンゾウ、スワロが続き、タイガ、ハクそしてドラゴンが武器を手に、後ろに続く。


何処で手に入れたのか、花びらが舞う中を、物々しい空気と歓声の中、ツリーハウスを出る……






種を拾いポケットに入れる惣一郎が、


「あのさ〜 やり過ぎじゃない?」


っと、素に戻る。


「いえ、村からの最初の一歩です。後々語られるかも知れないのですよ! 手は抜けません」


っと、熱弁するゴゴ。


あっ、そうですか……




森の中を歩き始める惣一郎と騎士達。


巣のある崖は、まだまだ先である。


近くまで惣一郎ひとりで行ってからと思ったのに……


朝起きて、下に行ったらこの騒ぎで言い出せない空気のまま、出発してしまったのである。


まぁ、たまにはいいか。


のんびり歩くのも!







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