六話【溶けゆく心】
裸で抱き着き泣きながら「ご主人様」と頬を擦り付けるベンゾウ。
色んな所が成長しているベンゾウに、混乱しながらも、懐かしい陽の香りに包まれ、自然と涙が溢れる惣一郎。
「ベンゾウ…… ベンゾウ!」
足を絡め、力強く抱きしめるベンゾウ。
「ベンゾウ……… 重い!」
青々としていた巨木の葉が、いつの間にか紅葉しており、葉を落とす。
ヒラヒラと黄色い葉が舞い散る中、ドラミも呆気に取られていた。
しゃがむスワロは笑みを浮かべ、再会を果たし抱き合うふたりを見ていた。
時間を忘れ、抱き合うふたり。
だが、徐々に惣一郎の足が震え出す。
「だぁ! 重いっつうの!」
「もうちょっと!」
「降りろ! つかなんで裸なのよ!」
「あっ、ホントだ… ベンゾウ服着てたのに」
「いいから降りろ!」
「無理、もう離れない!」
「腰が折れるわ!」
ようやく地面に足をつけるベンゾウに、惣一郎は着ていた白いローブを着せる。
「ベンゾウおまえ、背伸びた?」
「うん年取った! ご主人様の好み?」
「まだ若いな」
確かに20代後半に見える。
「もしかして…… 俺が死んでからどのぐらい経った?」
「8年? 9年かも」
「そんなに? 俺がこっち来てまだそんな経ってないんだが…… やっぱ次元越えると時間に差が出るみたいだな……」
「3日後って言ったのに、ベンゾウ半年も待ったんだよ!」
するとドラミの手を借り立ち上がるスワロが、ベンゾウに声をかける。
「ベンゾウ殿…」
振り返るベンゾウ。
黒髪のダークエルフ…… あの時のままだった。
「クンクン…… 誰?」
目を細め、睨むベンゾウ。
「うそ…… スワロ?」
「ああ、久しい…にゃ!!」
言い終わる前に飛びつくベンゾウ!
「スワロ! スワロだ!!」
だが、大量の魔力を消費し疲労困憊のスワロは、ベンゾウを受け止めきれず、抱き合ったまま倒れる。
「スワロ! どうしてスワロが…… アレ?」
意識が無いスワロ。
「まぁ、部屋でゆっくり話そう。ドラミ、みんなを中に」
惣一郎はスワロを抱き上げ、ベンゾウと部屋に向かう。
ドラミは固まったまま、3人を見ていた。
「なんで誰も気付かへんねん…… アレは人ちゃうで……」
落ち葉が舞う中を歩く、惣一郎達。
スワロをベッドに寝かせ、キッチンのテーブルにベンゾウを座らせる。
椅子の上で胡座をかくベンゾウ。
自分が裸なの忘れてないか?
惣一郎はスキルで下着を出し、ベンゾウに着せると、
「まずは眼鏡か……」
っと視力を測り出す。
「良かった、ずっと割れたの使ってて見ずらかったの! コレでちゃんとご主人様を見れるね!」
何気ない会話が、こっちの世界に来てから暗い惣一郎の心を溶かして行く。
「ほれ眼鏡! しかし大きくなったな〜 髪も伸びたし」
「おお〜 よく見える! あぁ… ご主人様だ……」
微笑む惣一郎。
今までの不安が嘘のように、なんとかなると思えた。
「腹減ってないか?」
「カレー!」
「あはは、だろうと思ったよ!」
惣一郎はテーブルに、作り置きのカレーを出し、ゆっくりと話し始める。
コレまでの事。
コレからの事を……
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