四話【信じ続ける】
旦那様に、何かあったのだろうか……
そう心配する弁慶。
ベンゾウは今日も、島で惣一郎の声を待つ。
数日が経ち、数ヶ月が経つ……
島でひとり来たる日に備え、訓練に明け暮れるベンゾウ。
ジビカガイライへの依頼にも参加せず、来る日も来る日も島で待ち続けた。
変わらない日々を繰り返す弁慶は、次元が開いたあの日の事が本当だったのか、記憶を疑いだす。
確かに感じた惣一郎の魔力。
島に残っていた魔力が、そう思わせたのだろうか?
次元が開いたのは事実だが……
声を聞いたベンゾウだけが、島でひとり待ち続けた。
その声すら、ベンゾウが強く望む心が作り出した幻聴だったのでは無いだろうか?
何が本当なのか、分からなくなる弁慶。
信じるに8年という月日は、長かった……
ワイドンテが解散し、光剣を使うピノが、ジビカガイライへ助っ人として加わる。
島から動こうとしないベンゾウの代わりに……
いくつかの依頼をこなし、ピノとの戦闘にも慣れて来たある日の早朝。
島の上空に突然、黒い雲が渦を巻き始める。
覚えのある魔力に、飛び起きる弁慶達。
やはり、夢じゃなかった!
島にはすでに、準備を終えたベンゾウが空を見上げていた。
慌ててギドを連れ出し、島に渡る弁慶!
セシルとクロは出遅れ、渦の中に次元が開くのを浜辺から見る。
目深にフードを被るピノも、目の前で起きている事に、理解が追い付かない。
瞬間移動で島に渡り、浜辺に倒れ込むギドを置き去りに、ベンゾウに駆け寄る弁慶。
空を見上げていたベンゾウが振り返り、駆け寄る弁慶に声をかける。
「弁慶、行ってくるね!」
次の瞬間、着ていた服を残し、消えるベンゾウ。
「待っ!………」
………………
砂浜に落ちたベンゾウの服を掴み、弁慶は疑った自分が許せなかった……
あれから数ヶ月、ベンゾウはただの一度も疑わず、島で惣一郎を待っていた。
たとえ声を聞いたのが弁慶だったとしても、数ヶ月も疑わずにいれただろうか……
真っ直ぐ信じたベンゾウ。
惣一郎をいまだ愛する気持ちは、ベンゾウにも負けない!
そう思っていたベンゾウに負けた気がして、悔しい弁慶が、島で涙を流す……
「アタイじゃ無い理由が分かったよ…… 無事に帰ってこいよ、ベンゾウ! それまでこっちは、アタイが守る……」
砂浜にはベンゾウの着ていた服とメガネに、朝陽が反射し、キラキラと光っていた。
その近くに落ちていた小瓶に目が留まる。
空を覆う渦が晴れて行く。
大きな犬と同じ白い髪のセシルが、波打ち際で朝陽が射す島を眺めていた。
「どうやら行った様だな」
「ええ、クロ…… 貴方は信じてた?」
「我が信じる信じないは、どうでも良い。彼奴は信じられぬ事をして来たではないか、あの惣一郎は……」
「そうだったわね……」
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