二十四話【禁忌】

朝から風呂で温まる惣一郎が、湯船の横で横になる。


ドワーフのカンが、打ち身に効く薬を調合してくれ、湯上がりの惣一郎の腰にスワロが、その薬を塗り込んでくれていた。


「どうだ主人よ」


「ああ、やはりこっちの薬の効果は大きいみたいだ、大分良くなったよ」


朝日がふたりの体の水滴に、キラキラと反射していた。


惣一郎はスワロの左腕のレーテウルを見て、


「試してみるか……」っと、つぶやく。






村の中庭には建物も増え、騎士達の訓練所などが出来ていた。


だがその騎士達は、ドワーフ達にこき使われ、力仕事に汗を流していた。


惣一郎はスワロを連れ、ツリーハウスを数日ぶりに出る。


ユグポンを種に戻すとポケットに入れ、復興に活気づく街の外まで瞬間移動で飛ぶ。


街から離れると森の中で、スワロを置き去りに距離を取る。


ある程度離れると、スワロが強制転移してくる。


惣一郎はネットで買ったポラロイドカメラで、陣を写し取る。


契約による陣は惣一郎の魔力と関係なく、フレームに収まるサイズだった。


「主人よ、何を始めるのだ?」


「ん? ちょっとね…… 助っ人呼ぼうかと」


「助っ人?」


「ああ、最強の助っ人!」


惣一郎は森に種を置き、また村へと帰っていくとミネアを呼び出し、写真を見せて話し込む。


スワロは惣一郎が何をしたいのか、首を傾げ理解出来ずにいた。





中庭の広場で惣一郎に言われた通り、写真の陣を地面に描くミネア。


次第に村人が集まりだし成り行きを見守り出す。


「ねぇ、何が始まるの?」


幼い犬の獣人が、ローズの袖を引き尋ねる。


「さぁ? また何か旦那様が始めたのですが」


ここは異世界の中の異世界、ユグポンの中。


村人に囲まれた広場で惣一郎は、地面に描かれた転移陣を前に杖を構え、静かに瞑想する……


訳も分からず陣の反対側に立たされた、スワロの腕のレーテウルが光出す。


息を呑む村人。


「なんや、この魔力は……」


驚くドラミが空を見上げると、別次元であるユグポンの中の天気が、怪しく曇り出す。


集中する惣一郎!


惣一郎と契約していた奴隷達が、魔力を吸われる感覚から地面に膝を突く!


「なっ、何が!」


スワロも例外なく……


固定された狭い空間に渦巻く魔力が空に集まり、暗くなる!


「なっ、なんて魔力量だ!」


ゴゴが膝を突くタイガを心配しながら空を見上げると、稲光する渦の中心に漆黒の穴を眼にする!


次元が開く!


惣一郎は足元の陣を浮かせると、コールをその陣越しに次元の穴に飛ばす!


『ベンゾウ!』





寝込んでいる間に思いついた事だった。


次元を超えて現れた厄災。


こちらから行けるなら向こうからも来れるのでは無いかと……


あとは迷子にならない様、道を示すだけ。


惣一郎達を繋ぐレーテウル。


ダメで元々、試して見て損は無い実験であった。


転移陣が使えるかも賭けだった。


ベンゾウがレーテウルを身に付けているかも……






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