十一話【攫われた子供】
ギネアが食べているとジルがやって来て「旦那様」っと話しかけてくる。
「ジル、決めたか?」
「はい、私は変わらず勇者である旦那様のお手伝いをさせて頂きます!」
そんな大事に考えないで欲しいが……
「まぁ、帰りたくなったらいつでも言ってくれ」
「ありがとうございます。みんな畑に集まっておりますが?」
「あっ、そうだった! すまん、スワロ!」
「ああ、任せておけ主人よ! 取り敢えずクルルーシェを育てよう」
「ジャガイモな!」
言っててスワロの情緒が分からない惣一郎。
食べ終えたギネアが、
「凄いな美味いし力が湧く! 世話になったが忙しそうだし、俺はこれで」
「じゃ、行くか」
「へ?」
トカゲの顔では分かりずらいが、理解出来ない驚いた顔だろう。
そんな爬虫類男を強引に連れ出し、外に出る。
「本当にツリーハウスの中だったのだな……」
出て初めて実感したのだろう、あの広さが木の中という事に、信じられない感じだった。
惣一郎は木を種にするとポケットに入れ、ギネアにオーブを見せる様に言う。
「向こうだな、じゃ行くか」
「いや、行くかっ……てぇぇ〜」
ギネアが喋ってる途中、気がつくと空にいた。
「なっ!!!!!」
そのまま景色がパッパッと変わり行く!
途中から地面がどちらかも分からず、手足と太い尻尾をバタつかせ、ずっと叫び続けていた。
やがて、オーブの光が空から地面に落ちると、惣一郎も手前に降りる。
どうやらココを攫った者は偶然にも、トリグルから直ぐ惣一郎達と同じケンズールまで転移し、森の中を進んでいた様だ。
奴らの目的は分からないが、ギネアにとって惣一郎との出会いは運が良かったといえる。
ギネアだけでは完全に見失っていただろう。
「この先にいるぞ。奴らはキャンプを張り、安心しきっている」
サーチで人数まで把握していた惣一郎がギネアに話しかける。
だがギネアは地面に大の字で目を回し、聞いてなかった。
「ったく、しょうがね〜な!」
お前のせいだ……
惣一郎はギネアを置き去りに、キャンプへ歩き出す。
小型の蟲が引く馬車の横に天幕を張り、焚火を囲み寝ている男がふたり。
馬車の上の狭い檻の中に3人の子供。
その檻の上で目を光らせる獣人の女性。
大きなウサギの様な耳が見える。
その耳が近付く惣一郎の足音に反応する。
惣一郎も無雑作に近付く。
「誰だ!」
獣人の声に寝ていた男が飛び起き、武器を探す。
「すまん、火が見えたもんで」
弓を構え「動くな!」っと声を上げる獣人。
だが、言ったそばから惣一郎を見失う。
辺りを探す獣人と男達。
「良かった。奴隷契約はしてないのね」
しゃがんで、檻の中の子供達を見る惣一郎。
檻の中の子供も驚き震えている。
「貴様! いつの間に」
っと振り返り弓を構え、矢を向ける獣人。
すると、ドサドサっと倒れる男達がまた、深い眠りにつく。
驚き目を見開く兎の獣人。
弓の弦は切れていた。
「貴様!」っと叫んだ瞬間に倒れる。
惣一郎の周りにはふわふわと、鉄球が浮いていた。
「ココって子はいるかい?」
檻の中で怖がる子供達のひとりが、ゆっくり手をあげる。
「ギネアと助けに来たよ。今来るから檻から出て待ってようね!」
すると回転するククリ刀が、いとも容易く金属の檻の扉を切り、フッと消える。
惣一郎は近くに種を置き、ドラミに話しかけると、木から黒髪の大人しそうな美少女が現れる。
「なんや、早かったやんけ!」
残念な美少女である……
「ドラミ、コイツらを拘束してくれ」
するとため息を吐く少女は杖を一振りし、現れた木の蔓が倒れている3人に巻き付いていく。
そこに遅れてふらふらと現れたギネア。
「ココ!」
「ギネア!」
っと、感動の再会。
犬の様な垂れた耳を揺らし、トカゲに抱きつく幼い獣人の少女。
残されたふたりの子供も、犬の獣人であった。
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