六話【急ぐので!】

「あのな、転移屋で移動するなら人数は少ない方がお得だろ?」


強引に付いて来たスワロに、惣一郎が説明しながら歩いて行く。


転移屋の前まで行くと、大きな馬車が止まっており、中から荷を運ぶ男達がいた。


「なんだゴゴ、お前辞めたんだろ。ここに何の用だ」


ガタイの良い牙を生やした男が、急に辞めたゴゴ達が面白くないのか、最初っから高圧的な態度であった。


「[トリザ]すまん、先を急がなくては行けないんだ! 転移屋を使わせてもらえないだろうか?」


「なんだ、忘れたのかゴゴ! 警戒が解かれるまで例外は無い決まりだぞ!」


「例外は? 今運び出してるのは何処からの荷なんだ?」


惣一郎がつい口を挟む。


「こ、これは必要物資だ! お前には関係ない」


「すまん、ホントに急ぐんだ。金も多めに払うから利用させてもらえないだろうか?」


「クドイぞ、ゴゴ!」


全く話を聞かないトリザと言う男。


「面倒臭いから、スワロ! 光剣でこのドア壊せ」


開き直った惣一郎が指示を出すと「はい!」っと杖を構え、宙に大きな光剣を浮かべるスワロ。


驚き武器を構える男達。


「お待ち下さい勇者様!」


ゴゴの声にハッ!っと驚くトリザ達!


後ろの馬車の男が持っていた荷を落として、


「魔女と、勇者か!」


っと、驚きの声を上げる。


見る見る青ざめるトリザ。


「すまんがホントに急ぐんだ! 蟲退治に」


そう言うと惣一郎はスワロに手で合図する。


大きな光剣がドアを周りの壁ごと破壊して、消えて行く。


何食わぬ顔で中に入って行く惣一郎とスワロ。


ゴゴが追いかけながら、


「トリザ、俺は勇者様と共に、この世界を変えてみせるぞ!」


っと、中に入って行く。


傭兵の男達は誰も動く事が出来なかった。




中に入ると、奥の大部屋のカウンターで、震えて小さくまるまる猫が、


「ゴゴかニャ! 一体何の音かニャ!」


っと顔を上げる。


「すまんが、ケンズールまで急ぐんだ! 通してくれ。勇者様がまた人々を救いに急ぐのだ」


慌てて発したゴゴの言葉に、恥ずかしくなる惣一郎。


白いローブの男より、隣のダークエルフに驚く猫がカウンターから木の杖を取り出し「こっちニャ!」っと案内する。


理解が早くて助かる!


案内された小部屋の魔法陣に乗ると、ゴゴが猫の前に麻袋を投げ捨てる。


「すまん!」


光り出す魔法陣。


光りが消えると目の前の違う柄の猫が、


「ようこそ、ケンズールニャ!」


っとドアを開ける。




急いで転移屋を出る惣一郎達。


岩山に囲まれた長閑なイメージの街であった。


惣一郎は近くの植え込みに種を置くと、ツリーハウスは植え込みの小さな木になる。


中からドラミとジルが出て来る。


種からドラミが話を聞いていたのだろう、良いタイミングであった。


「洞窟はどの方角だ!」


惣一郎の声に、ジルがキョロキョロと街を見て「向こうです!」っと指を刺す。


「直ぐに向かうから、みんなユグポンの中へ!」


また慌てて、植え込みの木に消えて行くドラミとジルとゴゴ!


「私は一緒に行くぞ!」


「ひとりの方が早いんだ! 着いたら必ず出すから中で待っててくれ」


急に人が増え不安になったのか、スワロが悔しそうな表情を浮かべ渋々中に入ると、また種になる。


種をポケットに入れ、上空に転移する惣一郎が理喪棍に腰を下ろし、ジルが指差した方角へと飛んでいく。


スワロの気持ちも分からなくはないのだが……






しばらく転移と飛行を繰り返すと、惣一郎のサーチに蟲の反応があった。


岩山の洞窟前に固まるムカデ。


団子状になっており何匹か分からないが4〜5匹はいそうだ!


ムカデ同士では食べないのだろうか?


目の前に降り立ち、直ぐに種を後ろに投げ置く!


すると大きな木が現れ、スワロが出て来る。


やる気満々だ!


遅れてドラミまで、様子見に出て来た。


手には惣一郎が夜な夜な作った、銀の杖を持っている。


まぁ、無茶はしないでほしい……






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