三話【続く者】

惣一郎の美味い食事に腹を膨らましたみんなは多少落ち着き、待遇の良い所に買われたと理解するとホッとした表情で、惣一郎の指示を待っていた。


「改めて、よろしくな! みんなが住みやすい様に部屋を用意するが、直ぐには無理なので、しばらくは向こうの小屋で寝泊まりしてくれ」


部屋まで与えられると聞いて、喜ぶ女性陣。


「俺は野宿でも構わないぞ……です」


虎の獣人が美味い食事だけでも十分と、食べ終わった皿を舐めている。


「この中は安全だが、ユグポンの気分次第で雨は降るからな。遠慮せず小屋で寝ろ! あと最初に言っておくぞ。女性陣に体を要求する事は無い! 俺はここに村を作り、戦える者を集め傭兵団を作ろうと思ってる。戦えない者には畑仕事や家事を手伝って貰いたい。なんせ始まったばかりのコレからの村なので、みんなで考え出し合いながら良い村にしたいので、意見があれば遠慮せず言ってくれ」


ガヤガヤと騒がしくなる女性陣。


道楽で大金を使うには若い惣一郎に、皆簡単には信じられないのだろう。


だがミネアが、


「皆さんこの方は勇者様です! 魔女を従え世界を蟲から救う勇者様です! 皆さんももう噂は聞いているでしょう? 私達は世界を救うお手伝いを任されたのです。私達姉妹も救われました。だから安心して下さい」


っと言い出すと静まり返り、惣一郎の隣のスワロに注目が集まる。


出しっぱなしの巨大な蟲の死骸。


異常な広さのツリーハウスに、美味い飯。


全てが規格外であったが、ミネアの言葉に皆んなが少しづつ信じ始める。


すると、ゴゴが惣一郎の前で片膝を突き、頭を下げる。


「勇者様、どうか私もそのお力にならせて貰えないでしょうか」


「はぁ? ゴゴは傭兵団に入ってるだろ?」


「はい、ですが勇者様の元、蟲と戦うお力になりたいのです。団の方はすぐに脱退して参ります。弟のジジも説得して来ますので、どうか新たな傭兵団に加えて下さい!」


「そりゃ、俺は助かるが……」


「ありがとうございます! ではすぐに戻りますので」


ドレッドヘアーを揺らし走り去るゴゴ。


惣一郎はジジって弟だったのか…… っと、違う所で驚いていた。


走り去るゴゴから視線をみんなに戻すと、全員が片膝を突き頭を下げていた!


「ちょ、そんな堅苦しい事しなくていいよ! 兎に角よろしくな」


ニコニコしながらスワロとミネアがみんなを立たせ、小屋へと案内する。


セリーナ達が食事の後片付けを始める中、テーブルに腰を下ろし「疲れる〜」っと、つい声を漏らす惣一郎。


「なんやおもろい事になって来たな〜 惣一郎!」


っと、楽しそうなドラミ。


全員に名前も付けないとな〜






夜、リビングのテーブルで、コレからの事をみんなと相談していると、ドラミが「戻って来たで! さっきの兄ちゃんや」っと窓の外を見る。


「入れてあげて!」っと、玄関へ歩き出す惣一郎。


入って来た男は、大きな麻袋を背負い、キラキラした目のゴゴと、目を丸くして驚くジジであった。


ドレッドヘアーの牙族の兄弟。


言われてみれば、顔も似ている。


ま、この髪型に牙を生やせば、みんな兄弟に見えるのだが……


「勇者様、よろしくお願いします」


「あの、勇者様。いきなり夜分に押しかけてしまい申し訳ありません…… ゴゴの話が良く分からないのですが……」


「だから何度も話したろ! 俺達は勇者様の元で鍛えてもらい蟲を倒し世界を救うのだ!」


ため息を吐く惣一郎が、取り敢えず今日は休め! っと小屋へ向かってもらう。









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