二十話【惣一郎の覚悟】

街中を進んで行くと、先に転移屋が見えてくる。


だが、入り口は塞がれ、槍を持つ見慣れた牙の大男が3人立っていた。


ドレッドヘアーの大男に見覚えがある。


騒がれる前に立ち去る惣一郎。


フードを被り仕方ないっと、ツリーハウスが出せる所か、宿屋を探し始める。


街の中心地に着くと、家の前に首輪に繋がれた人が並ぶ通りに出る。


奴隷商が並ぶ、この街のメインストリートだろう。


惣一郎の足が止まる。


すると、フードをかぶる惣一郎の肩を掴む手が現れる。


反射的に振り向く惣一郎に、


「やはり、勇者様でしたか!」


目は合わなかったが、急に方向転換した惣一郎を不審に思い追いかけて来た、ゴゴであった。


「見つかったか……」


「勇者様、なぜ街に?」


「ああ、物資の調達とクリゴウを目指そうと来たんだが、騒動に巻き込まれてしまって」


「そうでしたか、またお会い出来るとは。街は今、侵入者で閉鎖されております。転移屋も侵入者が捕まるまで利用できません」


「みたいだね〜」


「お越しになるのでしたら、私が上の者に話し、歓迎致しましたのに」


「いや、それが嫌なのよ、利用されたく無いしね」


「まぁ、分からなくも…… でしたら私が内緒で、ご案内致しましょう」


「ああ、兎に角内緒で頼むよ、恥ずかしいし」


「それで、どちらに向かわれるおつもりですか?」


「いや、出られないなら宿でもと、歩いていた所よ」


「宿屋でしたらこの先です、ご案内します」


「いや、ゴゴの権限で、転移屋使えたりはしないのか?」


「流石にそれは…… 申し訳ない。公にしていいのでしたら掛け合いますが?」


「ん〜 痛い所つくな〜」


「今仲間も皆、総動員で街を捜索中です。明日には転移屋の利用も可能でしょう。街はもう見て回られたのですか?」


「買い物だけね」


「では、この街自慢の奴隷オークションでもご案内致しましょう」


「いや、いいよ!」


「奴隷はお嫌いですか?」


「当たり前だろ、攫って来て嫌々奴隷にして売るなんて、ちょっと本気で街ごと潰そうかと思ったわ!」


「確かにそう言った者もおりますが、多くは罪人や生活が出来ない者が食い扶持を求めての事です」


「今騒いでるのも、仲間を助けに来てるんだろ?」


「ご存じでしたか…… 勇者様、この世は蟲により住める所が限られております。各地で縄張りを求めて争いも少なくありません。そんな争いに負けた者を、殺さず養うだけでも……っと思いますが」


文化の違いなのだろう……


理屈は分かるがついていけない惣一郎だった。


「侵入者も住む所を求め、争いに負けたリザードマンが、仲間を助けに侵入した様です。解放されればまた、何処かで罪のない人が住処を追われ、殺されるかもしれないのです」


安心して住める所か……


「早く蟲を倒さないと、いつまでも続くんだな」


「勇者様がされてる事は正に世界を、そう言った者を救う事です。我々傭兵にもっと力があれば、勇者様のお役に立てるのですが……」


惣一郎は改めて使命の重大さに気付かされ、目を逸らしてはいけない事であると、ゴゴに教わる。


そんな惣一郎の目の前を、檻を引く馬車が通り過ぎる。


檻の中には力無い目の奴隷だろう、戦さに負け怪我をした男達が乗っていた。


「ありがとうゴゴ、今自分に出来る事に気付かされたよ」


そう言うと惣一郎は、前に歩き出す。


ゴゴも黙って後ろをついて行く。






奴隷の並ぶ通りを歩く惣一郎。


目を背けず、並ぶ奴隷を見て歩く。


ドラミもこの中で、生活していたのだろう。


奴隷商の男が次々と惣一郎に声をかけてくる。


自分の店の商品を売り込む為に。


「奴隷売買は、現金だけか?」


「いえ、物々交換もやってますが、品物は何ですか?」


「魔石で……」







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