四話【崩壊スローライフ?】
惣一郎は近くにあった岩に腰を下ろし、震えるエルフの男に話しかける。
「脅かしてごめんよ、俺も記憶がなくて困っててさ〜 出来れば色々聞かせて欲しいだけなんだ」
エルフの後ろには、完全に伸びたリザードマンが3人…… 3匹?
鉄球の餌食になったのだろう。
「君は奴隷か何かなのか?」
コクコクっと頷くエルフ。
見た目20代だが、実年齢が分からないのがエルフだ。
惣一郎は落ち着かせようと魔法で水を出し、コップで渡す。
ゆっくり話し始めた彼の話では、この森に住んでいたエルフ族なのだが、最近このリザードマン達に襲われ奴隷として捕まったそうだ。
彼らリザードマンは奴隷商らしく、旅をしながら奴隷に適した種族を捕まえて町などに売り渡っている種族らしい。
惣一郎は驚く。
まさかこんなにも早く、スローライフの危機に遭うとは思いもしていなかった!
今度こそはと……
だが彼の話では、まだ27人の家族が、この森の奥のキャンプに捕らえられているという。
「なぁ、仲間を助けたとして、その首輪は簡単に外せるのか?」
「い、いえ、契約した者に解除させないと……」
面倒臭さ……
契約者に解除させないと一定距離離れる事も出来ないし、契約者が死ねば一緒に命を落とすらしい。
じゃ、鎖いらなくね?
溜め息が漏れる惣一郎……
「それで君の契約者は?」
「こ、こちらの[ガンゴ]というリザードマンです……」
さて、どうしたものか……
惣一郎は伸びた3人のリザードマンを紐で縛り上げ、ネットで買った荷車に積むと、エルフの[トト]に引かせながら、リザードマン達のキャンプへと向かう。
リアカーの軽さに驚くエルフに、道中も色々と話を聞く。
厄災だらけのイメージでこの世界に来たものの、お互い争うからか群れる厄災以外は距離を置き、単独でいる事が多いらしい。
この辺りは惣一郎が倒した、キリギリスの縄張りなのだろう、食料が豊富な森では近づかなければ襲って来ないらしいキリギリス。
トト達エルフ族の連中も、そのキリギリスのおかげで他の蟲からこの森で、隠れ住んで来れたと言う。
悪い事をした……
「惣一郎さん、あそこです!」
森の外れの岩陰に、いくつか天幕が張られており、地面に刺さった杭から鎖で繋がれた、数人のエルフが見える。
奥にも馬車の荷台にある檻に、数人のエルフが見えた。
「トト、リザードマンは全部で何人だ?」
「は、はい、確か16人です」
「わかった、俺が呼ぶまでここを動くなよ!」
すると一瞬で姿を消す惣一郎。
驚き辺りを探しているトトは、キャンプから悲鳴や呻き声を耳にする。
「もういいぞ、トト!」
惣一郎の声に、恐る恐る近付くトト。
そこには9人のリザードマンが、意識を失い倒れていた。
「トト、数が足らないんだが?」
惣一郎はサーチを使い森の中まで調べたが、リザードマンが4人とエルフが8人足らなかった。
トトはそれよりも、あの強いリザードマン9人をあっさり倒す惣一郎に驚いていた。
捕らえられたエルフの鎖を外し、檻を破壊する惣一郎。
恐々集まるエルフが、トトを見てホッとする。
「トト[ネイト]達が連れて行かれたわ!」
この奇跡が間に合わなかった事に、肩を落とすトト。
「連れて行かれた?」
「はい、多分この先にある町に売りに行ったのでしょう……」
「なるほど、じゃ追いかけるか…… 出たのはいつ頃だ?」
「………」
「[マテリ]大丈夫だから答えなさい」
「は、はい。明け方、トトが出かけた後、直ぐに馬車で……」
「惣一郎さん、今から追いかけても間に合いません。追いつく前に売られてしまえば、お終いです、買い戻すお金も我々には……」
「トト、この紐でリザードマンを拘束しといて! 俺が戻るまでは決して目を離すなよ」
それだけ言うと、また姿を消す惣一郎。
驚き辺りを見回すエルフ達に、声をあげるトト。
「みんな、言われた通りにするんだ!」
投げ出されたリザードマンの槍を拾い上げ、リザードマンを拘束していくエルフ達。
惣一郎が馬車で戻って来たのは、夜だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます