第5話 チートスキルの使い方
ひとまず俺は与えられた1000万ポイントの内、300万ポイントを使うことにした。
本来異世界に転移していれば魔族との戦闘の中で経験値が得られ、スキルポイントも手に入るようだが、残念ながら現代日本には魔族がいない――というわけで、俺は今後一生スキルポイントは手に入らないという前提で動くことにした。
割り振りの内訳はこうだ――Ⅰ型スキルに50万ポイント、Ⅱ型スキルに50万ポイント、Ⅲ型スキルに200万ポイント。
具体的に言うと、フィジカル強化系であるⅠ型では、瞬発力Lv.100、耐久力Lv.100、回復力Lv.100を主に取得している。
やはりというか、各スキル取得後にノードの派生が発生し――それぞれ必要となるスキルポイントは加速度的に増加した。レベル100を目安にしたため、50万ポイントの縛りで手に入れることが出来たのは、主にこの3つだけだった。
Ⅱ型では直感Lv.20、幸運Lv.10、治癒Lv.20を取得した。
Ⅱ型の初期ノードには興味深いものが多くあり、それぞれを3レベルずつくらい取得していくのでもいい気がしたのだが、ひとまず特化型のビルドということで。
そして最後、Ⅲ型――カリスマLv.1と読心Lv.1。実用的かつ、現代社会で好き勝手振るっても割りと誤魔化しの効きやすいやつを組み合わせた感じだ。
「とはいえ、まあ戦闘のないこの世界でやることってあんま無いよなあ」
現在深夜1時半。極端に遅い時間ではないが、大通りに人はまずいない時間帯だ。時折疲れた顔をしたサラリーマンとすれ違うくらいである。
ちなみに、すれ違う人全員に読心スキルを使ってみたところ――読心Lv.1の精度はそんなによろしくないことが判明した。サラリーマン達が今どんな感情を抱いているかくらいは分かるのだが、考えていることが一言一句分かるわけではない、みたいな塩梅だ。
まあ人は普通、頭の中で常に言語化しながらものを考えている訳ではないから『一言一句』という表現は適切ではないかもしれないが…相手が考えていることは確実に見透かせるが、実用性はあまり無いレベルという感じだ。
いかにⅢ型とはいえ、レベル1ならこんなものなのだろうか。
尚、レベル100の我がフィジカルは驚異的な結果を出している。コンクリの塊を泥団子のように破壊出来るし、鉄筋はスライムのようにぐにゃぐにゃ扱えた。(尚、これらの資材はここ10年ほど放置されていた解体現場から拝借した)
暫くブラブラしていると、俺が街に出た目的――お目当ての条件に合う相手を見つけた。
ピシッとしたスーツを着た、身なりの良い男性、恐らく40代。
仕事帰りなのだろう。だが、背はどことなく前かがみで、目には深い隈が見て取れる。
頭の中には彼を憔悴させる原因となる、大きな悩み事が渦巻いていた。
「こんにちは」
俺は声を掛ける。
「ああ…こんにちは」
男性はハキハキとした声で俺に応えた。背筋は伸ばされ、如何にもデキるサラリーマンといったところだ。だが、頭の中に渦巻く悩み事は相変わらず。
「何か用かな?」
男性は若干訝しそうに俺を見る。
確かに、深夜の1時すぎに知らない人に声を掛けられるシチュエーションは、中々不安になるものだろう。
もし俺が声を掛けた相手が女性なら、交番に駆け込まれていてもおかしくはなかった。
「驚かずに、まずは話だけ聞いてください」
俺はひとまず逃げられないようにだけ気を付けつつ、こう問いかけた。
「あなたから大きな不幸を感じます――人の死へと繋がるような、仄暗い気配です」
「ご自身や周りの方で、何か大きな病を患っている方はいませんか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます