最終話 決戦・魔獣大氾濫から王都を救え その②

 最終話 その②




 ルーシーside 前編



「ねぇ、ルーシー!!貴女ベルフォードさんから頭撫でて貰ってたわよね!!羨まし過ぎるだけど!!」


 冒険者ギルドでの作戦会議を終えて、私たちハーピーの羽根は担当になった北の門へと向かってました。


 そして、その道中で私に向かってお姉ちゃんが私に向かって声を荒らげてました。


「えへへ……だって私は頑張って話しかけたからね。スタンピードを見つけたことも褒めて貰えたし、後はこれからの事も解決したらまた頭撫でて貰えるって約束したんだ」

「う、羨ましすぎるわよ……私も声をかければ良かったわね……」


 そんなお姉ちゃんに、パーティメンバーのハイジちゃんとシェリルちゃんが声を掛けました。


「ミカはパーティリーダーなんだから、ベルフォードさんと話す機会なんか作ろうと思えばいくらでも作れそうじゃない?」

「そうよ。私たちなんかどう話しかけたらいいかすらわからないんだから」

「は、話しかけようとしたことはあったけど……リーファさんの殺人視線が怖すぎて無理だったわよ……」


 あー……確かにあれは怖いと思います。


『荒くれ者どもの酒場』でベルフォードさんにお話をしに行った時に、リーファさんにとても怖い視線で睨みつけられましたからね……

 あ、あれはもの凄い恐怖でした……


 で、でも!!ベルフォードさんを諦めた訳じゃないです。

 聞いた話によると、ベルフォードさんはリーファさんの他に、ツキさんと言うとても美人の方を奥さんにしたようです。


 先程ギルドでその姿を見ましたが……と、とても綺麗な方でしたね。

 何でも、ベルフォードさんが愛用していた刀が人の姿を得たらしいです。

 な、なるほど……そんなこともあるんですね……


 ですが!!ここガルム王国では重婚が認められています!!


 せ、正妻はちょっと無理だとしても……その側室?もしくはわがままは言わないので愛人でも構いません!!

 ベルフォードさんと一緒に居られる理由が欲しいです……


「と、とりあえず!!このスタンピードを食い止めることが出来たら皆でベルフォードさんに褒めて貰いに行くってのでどうかな?」


 私がそう言うと、お姉ちゃんとハイジちゃんとシェリルちゃんも賛成はしてくれました。



「それが良いね!!皆で行けばリーファさんの殺人視線も分散されるだろうし!!」

「いざとなったらルーシーを生贄にすればいいよね!!」

「ベルフォードさんに頭撫でて貰ってるんだからその位はして貰わないと!!」


「い、生贄は酷いと思うんだけど……」


 そんなことを話していると、私たちは持ち場の北の門に到着しました。


 楽しいお喋りはここまでです。ここから先は命懸けの戦いになります。


「ルーシー!!遠見の魔法でここからの距離と敵の数を教えて!!」

「了解だよお姉ちゃん!!」


 私はそう言うと、魔法杖を構えて詠唱に入ります。

 そして、目を閉じて集中をすると遠くの景色が見えてきます。


 私の遠見の魔法の射程は二十キロです。


 通常の魔法使いの方の遠見の魔法は五キロ。あのリーファさんでも十キロです。

 私はベルフォードさんに助けられたあの日からずっとこの魔法を磨いてきました。

 これだけは誰にも負けない自負があります!!


 そして、私の『目』に敵の姿が見えました。


「見つけたよ!!敵はここから十五キロの所に居るよ!!ゴブリンの群れが五つ。オークの群れが同じく五つだね!!ひとつの群れに対して十体だから、合計で百体になるよ!!」

「やっぱりスタンピードは厄介ね……こんな数の魔獣をまともに相手にしたら危なかったわ」


 お姉ちゃんはそう言うと、ハイジちゃんとシェリルちゃんに指示を飛ばします。


「ハイジとシェリルは遠距離火力魔法の詠唱準備!!貴方たちの射程に入ってきたら即座に魔法が発動出来るように準備して!!」

「おっけー!!」

「了解だよリーダー!!」


「ルーシーは遠見の魔法を継続!!ハイジとシェリルの魔法の射程距離。五キロの所まで来たら合図を宜しくね!!」

「了解だよ、お姉ちゃん!!」


 これが私たちの必勝パターンです。


 ベルフォードさんに助けられた時にアドバイスを貰いました。


『ルーシーさんは魔力に対する感受性が優秀だから、遠見の魔法や探知の魔法とかを極めたらすごい魔法使いになれると思う』


『ハイジさんとシェリルさんは魔法の火力と飛距離には目を見張るものがあるね。それを磨いたら遠距離から敵を殲滅出来るようになれるよ』


『ミカさんは周りを見れる才能があるから、早め早めに的確な指示を出すことを心掛けるといいよ。あとは防御結界に適性があるからそこを伸ばしていこうか』


『一人一人が得意分野の魔法のエキスパートになることで、パーティとしての強さが格段に上がると思うからね。頑張ってね』


 そう言われて考えてきたゴブリンやオークに対しての私たちの答えです。


 ゴブリンやオークは近接戦闘を得意としています。ですが、私たちはそれを苦手としています。


 なので近接戦闘に持ち込まれないように、遠見の魔法で敵の姿をいち早く補足する。


 遠距離火力魔法を撃てる二人にその位置を正確に伝えることで、先制攻撃で敵を殲滅する。


 そして、お姉ちゃんは


「私はこれから守護魔法で門全体を結界で覆うわね!!万が一があってもこれで安心よ!!」


 結界魔法を極めていきました。


 お姉ちゃんが本気で詠唱をした結界魔法はたとえリーファさんの高火力魔法でも破れません。


「さぁ!!私たちの戦いを始めましょう!!」


 女性魔法使い四人で形成されたAランクパーティ、ハーピーの羽根。その力を見せてあげますよ!!


 私は気合を入れて遠見の魔法を継続させていきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る