第48話『キメラオルトロス』

種族 キメラ(レベル2) 名前 キメラオルトロス

総合ステータス

攻撃B  魔攻撃A

防御B  魔防御B

敏捷B  魔力量B

部位

頭  キメラ  首  八又蛇

右肩 二角銀狼 右肩 二角銀狼

胴体 二角銀狼 背中 蜥蜴男

右腕 蜥蜴男  左腕 蜥蜴男

腰  二角銀狼 尻尾 スライム

右足 二角銀狼 左足 二角銀狼

任意スキル 風魔法レベル4・炎魔法レベル3・スタミナ消費軽減(大)・遠隔索敵(中)・威圧の咆哮・渾身の一撃・外殻強化・武器装備・麻痺毒噴射(小)

自動スキル 危機察知(中)・風属性ダメージ軽減(中)・物理攻撃力上昇(小)・防御力上昇(大)・物理軽減(微)・自然治癒(中)・反射力上昇(小)・暗視・気配遮断(小)

特殊スキル 眷属召喚


 オルトロスとは地獄の番犬ケルベロスの兄弟、双頭の犬顔と蛇のたてがみを持つギリシア神話の怪物だ。本物は漆黒の体毛だが素体が二角銀狼なので銀の体毛となっている。他にも前足がごつい等の相違点があるが、細かいことは無しだ。


 ちなみに本体のキメラは双頭の隙間にセットした。一番の急所を左右前方後方から守れる配置で、ふいの攻撃を防ぐことが可能だ。

 ノシノシと甲板を歩くと周囲から畏怖と驚嘆の声が上がった。

 俺は下がっていろと鳴き、縁から身を乗り出して口を開けた。


 武人カマキリはミサイル軌道の砲弾に対応し始め、ついに全弾回避を成功させる。足を折りたたんで急加速し、飛行船目掛けて再度突っ込んでくる。

 俺は薄緑色の風を両方の口にチャージし、首元の八又蛇をすべて前方向に移動させた。先に炎魔法を噴射し、そこに暴風を重ねて発射した。


「――――ギィ、ガアァァァァァァ!!」


 暴風は炎の竜巻となって進み、接近する武人カマキリに襲いかかる。

 前回と同じく身体の傾けで避けられるが、即座にもう一発を撃ち込んだ。


「ギチッ!? ギチギチギチギチ!!?」


 連続で暴風がくるとは予測しきれなかったのだろう。武人カマキリは炎の風に巻かれ、追撃の砲弾をモロに受けた。

 仕切り直しの旋回軌道が始まり、遠方で白い光が瞬いた。あの必殺攻撃で何もかもを破壊する算段のようで、団員たちに緊張が走った。


「――――総員、怯むな! 射撃体勢を取れ!」

「はっ!!」

「――――タイミングはクー特務兵に合わせろ、絶対に遅れるなよ!!」

「了解!!」


 決断の時は一瞬で、火炎暴風と砲弾が同時に放たれた。歌魔法の操作で弾道が調整され、武人カマキリの進路と重なる。すべての攻撃が一点に集まって衝突し、大森林の上空には爆炎と閃光が巻き起こった。

 辺りの景色はすべて煙に包まれるが、待っても動きはなかった。

 誰もが勝利を確信した時、煙を割って武人カマキリが飛び込んできた。


「――――はっ、舐めんな! 虫野郎!!」


 グロッサのイヤリングによって障壁が張られ、大鎌の一撃が止まる。リーダーは魔石の付きの剣を抜き、魔術の電撃を放つ。団員達も銃を撃ちまくった。

 さすがの武人カマキリも耐え切れず、真下の大地に落ちた。このまま歌魔法が付与された砲撃を浴びせたいところだったが、先にリーフェの力が尽きた。


「…………ごめん、慣れないことをしたからかな。休憩しなきゃ歌えそうにない」


 申し訳なさそうに言うが、リーフェを咎める者などいなかった。むしろこの戦いにおける一番の功労者であり、ゆっくりと休ませてやるべきだ。

 俺は甲板上から地上を見下ろし、武人カマキリが立ち上がるのを確認した。まだ飛行船を落とすつもりのようで、とどめを刺す覚悟を決めた。


「クーちゃん、地上の皆をよろしくね」

「ギウ、ガウラウ!」

「クー特務兵、戦い方は一任する。好きに暴れてこい」

「――――ギウ!」


 迷いなく縁から飛び出し、武人カマキリへと向かっていった。着地までの間に身体の形状を変え、さらに新しい姿へと変身した。



 …………武人カマキリの着地点付近では、地上に配置された騎士団員がせわしく動き回っていた。彼らの役割は戦闘の邪魔となる木っ端な魔物を追い払うこと、墜落した武人カマキリを地上に引き留めること、その両方だ。


「おーおー、おおよそ狙い通りの位置っすね。さすがリーダーっす」

「……ハドリック殿の計算力は耳にしていたが、これほどとは」


 大木の上から戦況を見渡すのは得意げな顔のミトラスだ。両手には魔法の遺物のナイフがあり、紐を指に絡めて振り回す。その少し下にいるのは魔石魔術の剣を持ったココナで、二人同時に構えに入った。


「そういえば同じ階級っすね。先輩として面倒見てやるっすか?」

「ご厚意感謝します。ですが、そういった心遣いは必要ありません」

「年下なのにお堅いっすねぇ。キツイ状況こそ気楽にっすよ」

「似たようなことは騎士団長にも言われました。でもこれが私の性分です」


 二人の視線の先では激しい射撃戦が展開されている。武人カマキリは大鎌を振り回し、地上班の誘導通りにミトラスとココナの元まで歩いてきた。

 最初にミトラスが駆け出し、間を置いてココナが追走する。接近に合わせて振られる大鎌を避け、ナイフの魔力刃で甲殻を裂く。痛手を受けて引いた先にココナが控え、魔術の刃で切り掛かる。息の合った連撃で時間稼ぎした。


「っ、斬撃の余波でこの威力か!」

「さすがに倒すのは無理っすねー。深追いすると死ぬっす」

「どうします? このままでは逃げられますよ」

「あたしたちの役目は……っとと、主役がきたみたいっすね」


 ミトラスが指差した瞬間、ドンと地鳴りが鳴った。降りてきたのはワーウルフリザード形態のクーだが、その両肩には亀魔物の甲羅と頭が生えている。さらに片腕には『元のサイズより小さくなった岩石巨人の腕』があった。


種族 キメラ(レベル2) 

名前 ワーウルフリザード・ガイアアーマー

総合ステータス

攻撃A  魔攻撃B

防御A  魔防御B

敏捷D  魔力量B


 クーは両肩から岩砲弾を撃ち、大鎌を岩石巨人の腕で受け止める。互いに攻撃の手を緩めず戦い、地形を破壊しながら移動する。ミトラスとココナも援護に加わり、三位一体の動きで武人カマキリを追い詰めていく。

 ダメージの蓄積で巨体がよろめき、すかさずクーが跳ぶ。岩石巨人の腕を従来のサイズに戻し、がら空きの顔面を思いっきり殴り飛ばした。

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