第13話 この家が燃えるとみんなが助かるのはなぜ?

「この家を燃やしたいんです」


そう言っている人を見かけた。

その家に住んでいるおばあさんが玄関の戸を閉めようとすると、男は食い下がった。


「お子さんももう居られないみたいで、この家は広過ぎるんじゃないですか?全部じゃなくても、半分くらいでも良いんです」


腹が立ったが、堪えて私は聞いた。


「どうしてこの家を燃やす必要があるのですか?」

「何年間も火事での出動実績が無かったら、事業仕分けでこの街の消防署が廃止されちゃうんだ」

「そうか、君は消防士だな。他の仕事をするのがそんなに嫌か?勝手過ぎるんだよ!」

「違うよ。僕は布団屋さんだよ。もし本当の大火事が起こったら一体誰が消すのさ」

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政治の魅力と怖さ 鴨坂科楽 @kamosaka

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