第6話 全ての欲を捨てるとき

僧侶である私は、全ての欲望を捨てるための修行に入る覚悟を決めた。


日々荒行をこなし、寝る間も惜しんでひたすら経を読んだ。

眠たい中勉強をしてウトウトすることが多く、そのたびに住職に怒鳴られた。


休みたいという欲を私はちっとも捨てられていない、そんな事実を突き付けられる。

それを断つため何でもやろう、改めてそう決めた。


蚊が止まったときも我慢して血をすってもらい、そのまま修行を続けた。


誰にも会わず何年も山に籠り続けたある日、住職が私の所へ来て言った。


「君がそうしている間に戦争が始まって、憲法も変わったんだ。

それで君宛に召集令状が来ているよ。

さあ、殺生は嫌だという欲を棄てなさい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る