享狂の朝

鱈場蟹 蠢徊

第1話 闇中発狂、バン爆発?



リンリンリンリンリンリンリンリン


ポッ…


ジュッ…


リンリンリンリンリンリンリンリン


ポッ..


ジュッ…



軽き愉快な音をあてがい

か弱きアルコールランプの

炎は揺れる。



リンリンリンリンリンリンリンリン


ポッ…


ジュッ…


リンリンリンリンリンリンリンリン


ポッ..


ジュッ…



誰もいないさ

静かな夜さ

怖い暗闇、森の奥。



リンリンリンリンリンリンリンリン


ポッ…


ジュッ…



ふうぅ、息を吐く。

周りを見渡す。

ランプの光が届く範囲にゃ、何があるやらしかと見えるが、

ランプの光の届かぬところにゃ、何があるやらさっぱりわからん。



リンリンリンリンリンリンリンリン


ポッ…


ジュッ…



いや待てよ。もしかしたら、

もともと世界は真っ黒で、

このランプの周りが異常なのかもしれない。

今僕が見ているのは幻影か?

はっ、面白い!

ま、関係ないけどね。

それが実物だろうと、幻影だろうと、

それが明るく輝いていれば、僕はそれでいいぜ…?



リンリンリンリンリンリンリンリン


ポッ…


ジュッ…



よっこらせっしょっと立ち上がって、

難儀そうに。

自分を包囲する暗闇を睨みつける。

その後、自分の髪の毛をくしゃくしゃに、乱しに乱して、

はっと笑う!

爽快だ。

ぴょんぴょんとその地で跳ねて、

ぱんぱんと太腿叩いて、

周りから見たら、まるでレースが始まる前の陸上選手。

えっ、でもね、周りに他の人はいない。

暗闇に僕一人だけ。

そうなんだ!


深呼吸、深呼吸。

次の瞬間、闇に向かって、


うわああああああ!


さあ、もう一回。


うわああああああ!


まだまだ。


うわああああああ!


さあ、叫べ。爆発しろ、僕。


うわああああああ。ここなら叫んでも、誰にも聞こえない。

うわああああああ。うわああああああ。

うわああああああ。不思議だ。自分の中の自然。

うわああああああ。秩序の中の混沌、混沌の中の秩序が呻いている。

うわああああああ。炯々とした目つきでベロを出す。

うわああああああ。や、狂ったか?とやあ!




ハアハア。疲れている。

しかし、我が胸中は、なにか誇らしげ。

わあい、レースを完走したんだ!

スポットライトよ、照らせ。



実際は目の前にアルコールランプの炎一つ。

ふらふら風になびいてる。

ああ、なんだかたくさん旅しちゃった。

もう寝ようか?

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