第3話

 一昨日の夜のことだ、不調なスマホをどうしようかと考えながらベッドに寝転んだオレの身体からだの真下にアイツはいた。

 そりゃあ驚いたよ、どっから出て来たんだ、って。したらば自分は霊体みたいなものだ、って言うんだ。


「スマホから合図を送ってたのに気づいてくれないんだもんな、オイラ悲しかったぜ」


 オイラってことは男?

 でも見た目は女の子だよなぁ。ってことは男のとか女装っってヤツなのか?

 そんなことより今さっき霊体とか言ってたよな、自分で。ってことは幽霊……もしやこの部屋って事故物件だったのか?

 待ってくれよ、まさか呪いのなんちゃらとか怨霊とかそんなんじゃないよなぁ、頼むぜ、ほんと。


「さっきから聞いてりゃほんと好き勝手言うよなぁ、オイラを地縛霊とか怨霊とか、マジで勘弁しろよ」

「だって部屋にいきなり出て来て、霊体です、だろ。それにオレが思ってることがわかっちゃうなんて、やっぱ憑依とかしてんじゃんか。そもそも自己紹介もしてないのにオレの名前を知ってるし……あ、そっか、もしかして背後霊?」

「そんなんじゃねぇし」

「じゃあ、何なんだよオマエは」

「オマエって言うな、オイラのことは、そうだなぁ、ワコとでも呼んでくれよな」

「それじゃワコ、オレに憑りついてどうするんだよ。言っておくけどオレはただのモブキャラだからな」

正宗まさむねはホラーの見過ぎだな。オイラは行き場がなくてとりあえず彷徨さまよってたらビビッて感じてさ、ま、そういうことさ」

「いや、全然説明になってないから」

「オイラは波長ってかそんなのがぴったりな相手に引き寄せられるわけ」

「やっぱ憑依じゃんか」

「ははは、まあまあ、とりあえず簡単に説明するよ。オイラ、ちょっと前までどこかの大学教授のところに憑いてたんだけどさ、その先生、高齢で引退したのと同時に施設に入っちゃってさ。とにかくしろの精神状態に変化が起きるといられなくなるわけ。スマホを使ったのは長距離の高速移動にはうってつけだからかな。自力じゃ行動半径も狭いしな」


 できそこないのメイド服のようなワコと言う霊体が言うには、自力で漂うより通信機器に相乗りする方が速いし余計な影響も受けなくて楽チンなんだと。


「ふ――ん、ってことはワコは電送人間みたいなもんか」

「電送ってか、電波的な?」

「いや、そっちだとヤバいヤツっぽいだろ。てか、さっきから憑いてたとか依り代とか自分で言ってるじゃんか」

「ああ、オイラこれでも霊体だからな」

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