あんぱんと牛乳

@yukirot

第1章 美肌の湯って怪しくね

 あんぱん片手に牛乳飲んで電柱の影に隠れてたら探偵に見えるよね。そんな先入観に囚われる日々を送りながら大体の人は生きているよね。まぁ僕もその一部なんだけどね。今の時代、探偵なんて名乗るやつは星の数ほどいる。その中でアニメみたいに犯人を捕まえたりなんかしたことある探偵なんて一握りだよね。大体の探偵は今の僕みたいに人探ししたりだよね。

「この人を探してほしいんです」

そう言って見せられたのは細身の男性の写真。

「彼は私の叔父なんです」

依頼者:わたぬき かおるが淡々と説明していく。

※彼の叔父に当たる:もり しんいち

「私は叔父に金を貸していましてね。一昨日が返済してもらう日だったんですけどね。12時に来ると言って一向に現れないんですよ。それで彼の家に行ったら奥さんに会いましてね。こうなったら奥さんに返してもらってもいいかと思いついたんですがね。離婚していたらしいんです。2年前に。ずっと音信不通で行方もわからなかったらしいんですが、先週急に家を訪ねてこんな話をしたらしいんです」

 ブーンと白のエクストレイルで中国道を走っていた。ははは。別に休暇に来たわけじゃないよ。

 「彼は2ヶ月有給を取ったから別府温泉に行くとだけ伝え、奥さんに借金の30万を渡して家を去ったそうです。僕にも返してから行ってほしかったですけどね。」

今向かっているのは日本一の温泉地、大分県。瀬戸内海の海風を感じながらドライブしていた。

 別府に着いたのは日が暮れる頃だった。予約していた旅館にチェックインをして自分の部屋に入ったときには倦怠感で動けなくなり、そこからの記憶はない。

 別府は大分の温泉街でも一際大きなところだ。そんなところでむやみに探しても見つかるわけがない。とりあえず温泉に浸かって考えるとしよう。

 ふぅ。

昨日の疲れが全て消えるような心地だ。さてここからどうやって探そうか。依頼者と奥さんが言っていることが正しいのなら、毎日色んな温泉を巡っていれば見つかるかもしれないな。なんてのんきに考えながら物思いに耽た。

旅館から出て街を歩いていた。せっかくの別府だ。色んなところを見たくなったのだ。人混みの中歩いているとその影は突然現れた。

 

 

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