EYES【アイズ】

だぐだぐ

第1話 万能細胞EYES

時は東歴2117年、人類は万能医療細胞EYESアイズを開発した!EYESアイズは人類の夢を叶えた叡智の結晶であった!不老!再生能力!若返り!他にも色々な事が出来るようになった!しかし!人類には早すぎた力なのかもしれない…。人類はEYESアイズを開発するまでに多くの時間を費やし、多大な犠牲を払ったのだ。その結果、失った物は余りにも大きかった…。環境破壊、超格差社会…数え上げればキリがない…さらに、EYESを開発する段階や、開発後、悪質な研究者などによって動物への移植もされており、結果、アイズと呼ばれる怪物も産み出してしまった…アイズはその狂暴性、強靭さ、生殖能力で世界を破壊し、埋め尽くした。世界で1番多い種はもはや人間などではなく、人工生命変異生物アイズとなった…これはそんな世界で生きてゆく1人の少年の物語である。


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荒れ果てた荒野に、オンボロの一軒家が突っ立っている。今にも潰れそうなボロ屋とは対称に、数百キロ先にはライトアップされた高層ビルなどが立ち並ぶ大都市【ネオタウン】が見える。そして今、ぼろぼろで汚れた服を着た1人の少年が一軒家に入った…


「ただいま…姉さん…大丈夫…?」

一軒家の中には、質素なベッドで寝ている、痩せ細った女が寝ていた。女は色白で、髪も先が白くなっている。帰りに気付くと体を起こし、手招きした。

「ゲホッゲホッ…お帰り…ダリオ…大丈夫…?アイズには襲われなかった…?怪我は…」

「姉さんは心配し過ぎだよ、姉さんの方が大変なんだから…とりあえず、薬は買ってきたよ。」

「ゲホッゲホッ…ゴホッ…ごめんね…生活苦しいのに、私のために…薬なんか買って来て…」

「いいんだ、姉さんが生きてくれるなら、それでいいんだ…食糧は僕がなんとかするから…あ、ごめん、また行くね。」

「ごめんね…ゲホッ…私が…不適合者で…」

僕の姉、カミーユは闇市で買ったEYESを適合したのだが、拒絶反応を起こし、常に発作が起き、生死の瀬戸際にいる。発作を抑えるこの薬も闇市で買ったものだ。

「…謝らないで…姉さん…大丈夫、僕がなんとかするから…」


「なんだ、また行くのか?」

部屋の奥から髭を伸ばしまくったお爺さんが出てきた。小柄で細身だが、その体は鍛え上げられた跡が窺える。

「もう少しで夜になっちまう。夜になりゃあアイズがわんさか出てきちまう。見つかったらおしまいだぜ?それでも行くのか?」

「デイビッド…うん、明日以降の食糧が尽きててね…いつなくなってもおかしくないし…」

「…お前さんは、止めても行くだろうしなぁ…仕方ねぇ、行くのはいいが、絶対に帰ってこい、あと、アイズを連れてくるんじゃねぇぞ…?」

「うん、いってきます。」

そうして少年は一軒家を出た。そして荒廃した町に向かって歩き出す…


「うーん…流石にもう残ってないのかなぁ…」

ダリオは崩れた店で食糧を探す。

「あ、これイケそう。あ、あんなところにも…」

ダリオの視線の先には、崩れた支柱の先に乾パンらしいものが見える。そこに手を突っ込んでまさぐる。

「うーん……もう…少し……取った!あっ…」

がしゃあんと音を立てて支柱が崩れた。


「痛て…でも、缶詰めゲットだ…。」

崩れた支柱から抜け出し帰路に着く。そして気付く。

「あ…もう夜だ…まずい…急いで帰らないと…」

ダリオは駆け出した。しかし、時既に遅し。先程立てた音で何者かが近づいてきていた…瓦礫の混じった砂を強靭な足が踏みしめる。サク、サクとダリオに接近する。

「まずい、見つかった…!」

ダリオは全力で走り出した。それと同時に、狼の様なアイズが群れで追いかける。頭部からは歪な眼が幾つも見え、その体は堅い外殻で覆われ、2mもある巨体である。


ハァッハァッハァッ


すぐに息が上がる。差が縮まる。足音が近づく。


ハァッハァッハァッハァッハァッハァッ!!


ダリオが振り向くと、大口を開けたアイズが眼前にいた。



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「ダリオの野郎…遅ぇな…あって欲しくはないが…」

「まさか…アイズに…?」

「くそっ、俺が探しに行ってくる!カミーユはここで待ってろ!」

「私も行くっ!」

「駄目だっ!…あいつは…どうあってもお前さんの無事を願ってた…だから外に出たらすぐに死んじまいそうなお前さんは行かせねぇ!」

「でも!」

「いいから!安心して、帰りを待っていてくれ。じゃあ、探してくるからよ!」


一軒家からデイビッドが1人荒れた町を目指す。と、すぐに何かにふにぃ、と躓き、転びそうになった。慣れない感触に躓いた物に目を向けると…


「こ、コイツはっ!!!」

デイビッドはそれを抱き抱え、急いで一軒家に駆け込んだ。


「!早かったのね…それで…ダリオはいた…?それとももう近くまでアイズが…?…これ……は……………

いや…いや…いや……いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


そう、デイビッドが抱えて持ってきたのは、四肢を捥がれ、体に抉られた跡が何ヵ所もある、見るも無残に変わり果てたダリオだった…。カミーユが体を震わせる。

「いや…助けて…!ダリオを助けてよ!」

「無茶言うな!こんな傷…もう…いや、待てよ…あそこならもしかしたら…行くぞ!乗れ!」

そう言うとデイビッドは古びた重力反発式単車レギュレーターを出した。

「向かうってどこへ!?」

「闇市だ!あそこなら、もしかすると…」

そうして一行は、闇市へと向かった…

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