第67話 幸せとイルカ

「おー、へー、kyo、凄い。めっちゃとぶ」

「実際見るとすごいな」

「しかもかわいい。神。持って帰りたい(?)」

「持って帰る? ぬいぐるみとか?」

「その手があった。買うしかない」


いやぁ、喜んでる女の子を見るのはいいな。イルカ半分、もう半分はcoreに目がいってしまっている。


「ん? kyo、私なんか見てどした? なんかついてる?」

「…ん? …幸せオーラ出てるから授かろうかと(?)」

「草。イルカから貰いなよ。あんなにかわいいんだから」


coreのがかわいいよ。

なんて言えるわけも、言うわけもない。


「俺は楽しそうな人を見るのが好きなんだよ」

「へー…」


何故か俺を見るcore…


「…」

「顔赤くなってて草。kyoって女友達多いんじゃないの?」

「…それ関係ないからな」


多いからと言って慣れてるなんて言ってない。俺はダサい(?)。この見られてるだけの時間はどうにも無理だ。


「反応が年齢一個上のはずなのに年下みたい」

「ほっとけ」

「拗ねないでよ。ごめんて」

「拗ねてんじゃなくて、恥ずいだけだ。俺じゃなくてイルカ見とけ」

「ほーい」


再び視線をイルカに戻した…が、あんまり集中出来なかった。数分後、ショーが終わった。


「私がクソガキだったら将来の夢が水族館の飼育員になるところだった」

「今の将来の夢とかあるのかよ。俺は無い」

「んー、じゃあお嫁さんで」

「…えっと、結婚願望ありってことか」

「いや、別に。めんどいし。適当言っただけ」


結婚なんて考えたこともない。多分ある程度歳をとったら考え出すんだろうが今はわからん。


「とりあえず話しながら歩いてるだけでそれなりに楽しめるし、グダグダ水族館まわろ」

「そうだな」


特に何事もなく、話して歩いていたらあっという間に時間が過ぎた。


「外もう黄昏てる」

「夕暮れを黄昏てるっていう人、現実で初めてみた」

「私も初めて言った」

「…へー」

「あっ、最後にお土産。イルカが呼んでる」


館内出口付近のお土産屋さんには、カップルがキャッキャしてたり子連れの家族がわいわいしている。


「いた。イルカ。かわいい」


coreは片手に収まるくらいのサイズのぬいぐるみを手に取った。


「これがちょうどいい。kyoはなんか買う?」

「じゃあ俺も同じの買うか。やっぱりテーマパークとか行ったらノリで買うだろ(?)」

「草。いいね。嫌いじゃない」


思い出ってことでとりあえず買った。男友達と来たところで多分買わないだろうものだ。


「じゃあ帰ってゲームしますか」

「結局そこに戻ってくるわけか」

「原点にして頂点。ま、今日、普通に楽しかったけど」

「それにcoreが同じ高校の後輩ってことを知れたしな…あんま嬉しいことかはわからんけど」

「あっ、そっか。きょーがせーんぱーいせーん(棒)」

「…高校で変なことしてくんなよ。会った時のうぇーいって肩組んでくるやつとか、今の先輩先輩ぱいせんぱいとかいう意味わからんやつとか」


会うくらいなら別にいいが、あまり関わられては変な噂になりかねない。


「する訳ない。ただでさえこんな見た目のせいで変に気使われたり、先輩に敬語使われたりするんだし。目立ちたくない」

「お互い平和に暮らそう(?)」

「暴れるのはゲームだけ。理解。ま、明日は教室に凸るけど。kyoの制服姿拝む」

「別にいいもんじゃねぇぞ。俺も期待してやろうか?」


まぁ普通に気になるけども。


「思ったより普通だから期待するなよー、少年」

「さすがに今とは雰囲気違うだろ」

「妄想ならいくらでもしてもろて」


そんなこと言われる前にもうしてるんだよなぁ…俺は高校生だからな(?)


「kyoの場合はあれか。私以外にも妄想できる女の子がたくさんいるのか」

「その言い方やめてくれ」

「否定しなくて草」

「うっせ。さっさと帰るぞ」

「はーい、ご主人様ー(棒)」

「…」

「無視すんなー」


と、肘でグイグイしてくるcore。


「俺はご主人様じゃねーから」

「なりたいとは思わんかね?」

「俺が男子高校生だと思えばそんなこと聞かずとも分かるはずだ」

「草。着せ替えDLCあったら即買いしてそう」

「俺はある程度世界観は大切にしたいから、戦地に水着で行ったりしない(?)」

「メイドが銃器持ってんのはアリ?」

「アリ」

「草」


高校が近いし、住んでる場所もそこそこ近い。つまりは乗る電車も、降りる場所も同じだ。


「意外と疲れたな…」

「はしゃぎすぎ?」

「何も無ければ基本引きこもってる俺が、二日連続アクティブに動きすぎたからな」

「なるほど、はしゃぐクソガキムーブかましたわけか(?)」

「そう言うことだ」


今日昨日どころか、その前も色々あった。毎日女の子と遊んでいた気がする。


「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「なんか喋ってくれ」

「眠そうだったから」

「むしろ起こしてくれ」

「ん? わかった」


そう言って俺の右の頬を軽く引っ張った。


「はい」

「話し相手になってくれるだけでいいんだが」

「問題です。私の昨日の晩御飯はなんでしょう」

「カレー」

「残念。正解は回鍋肉でした」

「分かるわけないな」

「罰ゲーム。何がいい?」

「えっ? 俺が決めるの? ってか、罰ゲームあんの?」

「なんでもいいよ。暇だし」


めちゃくちゃ適当かつ本当にテンションが暇つぶしだ。


「じゃあ、無難にデコピンで」

「どこが無難か知らんけどいいよ。せーの、ドン」

「いて…」


ノータイムのデコピン、思ったよりは痛い。


「…なんか面白いこと言って」

「デコピンしてからの面白いこと言っては相当鬼畜の所業だな…あれは俺がまだ中学生だったころの話」

「面白い話出てくるの草」

「そのフリは対策済みだ」


俺の面白い話(黒歴史)を話していると降りる駅に着いた。


「今日は楽しかった。ありがと、kyo」

「そりゃよかったし、俺も楽しかった」

「じゃ、帰ったらまた」

「飯食って風呂入ったら行きやす」

「うぃー」


サラッと別れて帰宅、夕飯、風呂を済ませゲームを起動した。既にオンライン状態で待機していたらしきcoreから招待が届いた。


「うっす」

「んー」

「なんか食べてる?」

「夕飯後のデザート。杏仁豆腐」

「いいもん食ってんな」

「冷蔵庫にあったスーパーの安いやつ。いいものでは無い。美味いけど」


この感じ…実家のような安心感だぜ(?)。coreの声は低めで聞いていて落ち着くのもある。


「やっべぇ…急に眠くなってきた。マジ急に眠い」

「草。無理せず寝てもいいよん。ってかそんな眠いならそのまま寝ても良かったのに」

「coreの声聞いたら眠くなっちまった…」

「草。そんなことある? 疲れ溜まってるからじゃなくて?」

「それもある。疲れとcoreの声のハーモニーによって眠さ倍増…」

「とりあえず寝てもろて」

「いいのか? 今、ここで、眠ってしまっても」

「いや、ベッドで寝てもろて」

「わかった…すまん、誘ってもらってすぐ寝るとか普通に申し訳なくて、すまん。申し訳ない」

「謝りすぎ。別に気にしてないし、気にしないで。今日楽しかったし、ゲームならいつでも出来る。ってことで、おやすみ。一日楽しかった」

「おやすみ。今日はありがとな」


………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る