俺には義妹も幼なじみも色んな所で繋がったたくさんの女友達もいる…はずなのに

第13話 地雷系はお好み？

「きょーが？ どうしたの？ なんかぼーっとしてるけど」

「ん？ 安心しただけだ」

「…？ よくわかんないけど良かった。じゃあ次、これとこれならどっちのが好き？」

着せ替え人形になったのは俺じゃなく楓の方だった。楓の服を俺が選ぶらしい。

「じゃあこっち」

「あんたって量産型とか地雷系好きなの？」

「…わからん。ただ俺はピンクとかフリフリとか女の子っぽいなと思ったからそっちを選んだ」

自分の服すら分からないのに、女の人の服を選ぶなんて無理だ。

「つまりあんたは女の子っぽいのとかかわいいのが好きなんだ」

「クールとか綺麗よりカワイイのが好きではある…かもしれない。ま、正直その人に似合ってたらどっちでもいいけどな」

「なるほどね。とりあえず選んでもらったやつ試着してみるね」

「マジ？」

そこそこの量あるし、楓に言われた通り本能のままに選んでしまったせいでスカートの長さとかきわどいのもあるんですけど…

「せっかくだし着るでしょ。その代わり似合ってるか似合ってないか、あと感想教えて」

「絶対参考になんないからな？」

俺がいいと思った服が俺以外にウケるかと言われたらかなり怪しい。俺のせいで楓に恥をかかせてしまう訳にはいかない。

「いいから、いいから…あっ、覗くの禁止ね」

「俺に覗く勇気なんかないから安心しろ」

楓は試着室の仕切りのカーテンを閉めた。雑音の多いショッピングモール内でも、布の擦れる音がカーテン越しに聞こえてくる。なんだろうすごく鮮明に聞こえるな…待て。平常心を保て、俺。

「おまたせ」

「あぁぁい！ …こほん、俺はお前のことなんて見てないぞ(？)」

「見てない？」

「ああ、見てない。なんなら耳も塞ごうと思っていたところだ(大嘘)」

焦って変なこと言った気がするが、とりあえず平静を保て俺(手遅れ)。まずは服装を見て褒めよう。出てきた楓の姿は地雷だったか量産型。ピンクと黒主体の色、フリフリしている服だ。

「…どうせきょーがは私なんかよりいつも学校で会ってるあの子の方が好きなんだよね。私の事なんてどうでもいいんだよね…そうだよね。私なんかよりあの子の方がかわいくて良い子だし、話してる時楽しそうだもんね…私みたいなネガティブでかわいくなくて、性格も悪い女といても楽しくないよね…ごめんね。でも、私はきょーがのこと好きだから、それは絶体絶対本当だから……」

ちょっと泣きそうになりながら距離詰めてくるんですけどぉ！ やっぱ俺の事好きなの!? いや、それより怖ぇよぉ！

「あ、えっと…楓？ どうした？」

「どうした？ じゃないよ！ 私はきょーがのこと好きなのに、他の女と喋ってる時も我慢して何も言わずにいるのに、なんなの!? 私はこんなにこんなに、ずっっっっときょーがのこと考えてるんだよ!? …あっ、ごめんね。うるさいよね、ネガティブだよね………あ、暗い女なんて、きらい…だよね」

怒ったり悲しんだり大変だな。にしてもどうすればいふい…なんか地雷踏んだか？ とりあえず謝って褒める？

「ご、ごめん！ そんなことないぞ。楓はかわいいし、一緒にいて楽しい。服もめっちゃ似合ってるし、その髪も綺麗だし、声好きだし、靴も綺麗だし、それに笑顔がかわいいじゃないか。俺は全然楓のこと嫌いじゃない」

「ほんと？ 本当だよね？ 嘘じゃないよね？ 私の事嫌いじゃないってことは好きってことだよね？ 私を一生愛してくれるんだね？ 放課後は私と会ってくれて、夜は寝落ちするまで通話してくれるんだよね？ 卒業しても一緒だよね？」

何その期待の眼差し。怖ぇよ！ ってかマジで言ってんのか？ 急にどうしちゃったんだ？ 何だこの状況。

「あ、えと…昔から好きだし、今まで通り卒業したあとも会うと思うけど、放課後はバイトとかあるし毎日は無理かも……」

「…ふーん、私なんかよりバイトの方が大事なんだ。私との時間よりお金の方が大切なんだ…」

情緒不安定過ぎないか…にしてもどうしよう。もしかして頭打った？ たんこぶ出来ないか確認するために頭を…触るのはあんまり良くない気がするから、肩を揺さぶってみよう。いや、それも触ってるけど肩ならいいだろ(自己完結)

「ちょっと失礼」

なんか言われたら後で謝ろう。

両手で楓の肩を掴んだ。

「な、何!?」

「大丈夫か？ 正気か？」

揺さぶるまでもなく素の楓が戻ってきた。驚いたのか目をぎゅっと瞑っている。

「何しようとしたの？」

「頭を打って変なことを言ってると思ったから、揺さぶって正気に戻してやろうかと」

「なんだ、そういうことか…ってか、今の私の中の地雷系の女の演技だからね？」

今のが演技だとしたらプロの技だ。実は地雷女説が出てくるくらいガチだった。

「演技か…よかった。お前が壊れちまったのかと思った」

「にしても反応、面白かった。私もちょい恥ずかしかったけど…」

「じゃあやめろよ！ 意外と声でかいせいで周りに見られたと思うし」

後ろをむくと明らかにこちらを見ていたであろう一般人がスーッと去っていった。

「よし、楓そろそろ時間だ。早く行くぞ、早く！」

「ふぇぇ、酷いよぉ」

「ふぇぇ、って言うな！」

悪い意味で注目を集めている…店のためにも、俺の心臓のためにも早く。

「あんたが面白いからついつい♪」

「なんでそんなに機嫌いいんだよ」

「あんた鏡みた方がいいよ？ 面白いから」

更衣室の鏡には顔を耳まで真っ赤しかの俺と、ほんのり顔の赤い楓の顔が写っている。

「耳まで真っ赤になっちゃうくらい恥ずかしかったの？」

「うるせぇよ！ 早く着替えろ」

「はいはい、わかった♪」

上機嫌な楓を無理やり中に押し入れ、強引にカーテンを閉めた。

「そういえばこの服の感想ちゃんと聞いてなかった。どうだった？ もっと落ち着いた色のが好き？」

「全然かわいかったぞ。まぁ、俺の意見は参考にならないから気にすんな。多分どんな服で出てきても俺はお前にかわいいしか言わん(？)」

「なんかありがと…承認欲求満たされた気がする」

「気がするだけだろ」

少し待つと元の姿に戻った楓が出てきた。こうしてみると今の格好の方が似合ってる気がする。

「さてと、本当はもっといっぱい着たかったけどまぁいっか、面白いもの見れたし♪」

「そりゃあ良かったな…」

「でも今から暇になっちゃうな。あっ、ゲーセンでも行ってみる？」

「そだな…とりあえずここ離れたい」

店に迷惑をかける前にさっさとゲーセンへ向かった。昨日いたので今日もいるかもしれないと少し中を見て見たがソフィはいないらしい。楓は俺で遊ぶのが楽しかったのか機嫌がいい。

「あれやろ。銃でゾンビ殺すやつ、ホラー映画前だし(？)」

「関係ないけどいいぞ。百円玉の貯蔵が十分か」

「百円玉なら2枚しかない」

「よし、俺が千円崩す」

「あんたコンテニューする気満々？」

「当たり前だろ。この店のトップ5に入る勢いで行くぞ」

百円玉を用意し、例のゾンビシューティングゲームの前へ。大きなモニターとそれっぽい銃のコントローラーが置いてある。

「いいか、狙うのは基本頭だ。あとこういうのはオブジェとかを破壊するとボーナスとかが手に入ったりする。初見殺しとかびっくり要素もあるだろうけど冷静に対処していくぞ」

「あんたってもしかしてガチ勢？」

「いや、動画で見ただけでやったことほぼない」

「そんだけ熱く語っといて初心者なんだ。ま、とりあえず何も考えずにやろ」

百円を入れてゲームスタート。画面内に出てくるゾンビを銃で倒していく…

「おまっ、頭狙えって！ 体狙う意味ないから！」

「だって当たんないし、心臓も急所じゃん」

「ゾンビは元々死んでるから心臓動いてねぇだろ」

「…あっ、死んだ」

「よし、コンテニューだ」

百円玉を入れるとライフ全回で復活、その場で復活した。

「ひゃっ！ もー！ その降ってくんのびっくりするからやめてよ」

「女の子みたいな驚き方してねぇでさっさと頭撃て」

「私女の子ですけど。あっ、死んだ」

「よし、コンテニューだ」

思ったより盛り上がり、崩した千円分の百円玉を使い切る頃にはいい時間になっていた。