俺には義妹も幼なじみも色んな所で繋がったたくさんの女友達もいる…はずなのに

茄子ぽん酢

第1話 ① 何気ない日常

「おにい、起きて。遅刻するよ?」

「…ん? ああ、おはよ」

「おはよ、早く着替えておりてきてね」


俺の朝は義妹に起こされて始まる。もう既に制服に着替えた中学生の義妹。名前は恋瑠璃こるり 歩美あゆみ

高校2年、新しいクラスにも上手く馴染めてそれなりに楽しい学園生活を送っている。


「おはようきょーが、弁当そこに置いといたから持ってって。朝ごはんは歩美と食べてね。じゃ、私は行くから」

「ありがと姉ちゃん、いってらっしゃい」


身支度を済ませ一階へ降りると、丁度姉ちゃんが家を出ようとしていた。両親は朝から仕事で俺が起きる頃にはいない。姉ちゃんはたまに気分で朝ごはんと弁当を作ってくれる、現役大学生。名前は恋瑠璃 紗倉さくら

ちなみに俺の名前は恋瑠璃 響雅きょうが。『う』とちゃんと発音せず延ばすように『きょーが』と呼ばれることが多い。他には『きょーちゃん』『きょーくん』あたり。普通の高校2年生だ。


「おにい、早く食べよ?」

「おう、そうだな」


テーブルには2人分の朝食が既に並べられており、テレビからはお天気お姉さんの声が聞こえてくる。


「おにい、今日傘いるって」

「おん」

「今日バイト?」

「おん、帰り遅くなると思う」


2人での朝食にあまり会話はなく俺は黙々と飯を食べ、いもうとは時々話しかけてくる。原因は朝の俺はテンション低いせいだ。


「じゃ、いってきます。学校とバイトがんばってね」

「いってらっしゃい。そっちもがんばれよ」


朝食を食べ終わると雑に皿を片付け、いもうとは家を出ていった。

一人家に残った俺は、テレビのニュースをながら見しながらソシャゲのログボを受け取る。それかSNSを何となく見る。時間になると家を出た。


「あっ、響雅くん。おはよう」

「おはようございます。むぎちゃんもおはよう」

「ワンっ!」


だいたい家を出ると近所にいるむぎと散歩中の和泉いずみさんと出会う。和泉さんは年齢は失礼なので聞けないが、既婚者で結構若いと思う。この辺りに引っ越してきたのも割と最近で出会う度に声をかけてくれたり、暇な時は少し話したりしている。


「今日旦那に朝から手伝りのクッキーが食べたいとか言われちゃったから、作ろうと思うんだけど響雅くんはどんなクッキーが好き?」

「そうですね…やっぱりシンプルなバタークッキーが好きっすね」

「じゃあそれにしようかしら。また夕方か明日の朝に響雅くんにも分けてあげるわね」

「マジすか?ありがとうございます。今日僕バイトあるんで夕方は無理かもですけど」

「じゃあまた渡せる時に渡すわね」

「わかりました。楽しみにしてますね…じゃあ僕、そろそろ行きますね」

「いってらっしゃい」


和泉さんと別れて学校へ向かう。いつもの場所まで来るといつものやつがいた。


「よっ、楓」

「おっはー、きょーが。行こ」


近所に住む幼なじみの雨霧あまぎり かえで。俺と同い年、同じ高校に通っている。基本的に登校時はこいつと一緒のことが多い。


「週末暇?」

「なんで?」

「見たい映画あるから一緒にどうかなと思って。ジャンルがホラーで、私の友達全員ホラーとか無理らしいから行く人いなくてさ」

「なんて映画?」

「ジェスター」

「あー、何となく面白そうだからいいよ」

「さんきゅー♪」


たまにこうやって遊びに誘われたりするが、楓は割と友達が多いので俺から誘っても断られることが多い。つまりは俺の優先順位はこいつの中で低いってことだ…と言ってもそもそもあんまり誘わないけど。

学校に着くとクラスが違うし、少し離れているので早めに別れて真っ直ぐ教室に向かう。

教室に入るとそこそこ人がいるが俺の仲のいいやつは一人を除いていない。理由は遅刻ギリギリに来るからだ。なのでその一人の所へ、自分の席の隣だ。


「おはようございます、恋瑠璃くん。今日のガチャ更新見ました?」

「あれ? 今日変わってたっけ?」

「変わってますよ。しかも人権の復刻です」


新学年、4月から隣の席のおとなしくてちょっと地味な女の子、月野つきの 星空せら。同じソシャゲをやっているのを知り、ちょいちょい話している友達だ。


「サポートでも使えるし、サブアタッカーとしても使えるので、無凸でも持ってないなら引いた方がいいと思います。そこら辺の攻略サイトでもtear1以上、私も無凸で持ってましたがかなり良くて、おすすめ凸は2凸か完凸、もちろん今の私はバフ量が上がる2凸です(早口)」

「この廃人め…俺は持ってないし、丁度10連あるから引いてみるか」


ガチャを回すと演出で画面が虹色に光った。しかも虹が2つある。


「おっ! 2枚抜き!?」

「なんですと!」

「しかも、しかも…しかも! しゃぁー! すり抜け無しの2枚抜きぃ! 月野! ナイス! 俺、教室に着いてからガチャ引く教になるわ!」

「えー! すごい! 久々に見ました、2枚抜き! 私も教室に着いたらガチャ引く教、入信します!」


歓喜の声をあげると周りからの視線を感じた。


「…」

「…」


月野の顔が赤くなっている。俺の顔も多分赤い。


「…よ、良かったですね」

「…おう」


2人静かになると丁度チャイムがなり、それと同時にクラスメートが一斉に入ってきた。こいつらの中にいるやつが俺の友達だ。それに続くように歩いて先生も入ってきた。


「はい! セーフ! 江美センセより先なんで」

「はいはい、ギリギリセーフね。もっと余裕もってきなさい。じゃあ出欠確認するから座って…」


担任の琴原ことはら 江美えみ先生は美人と評判の先生だ…しかし、あまり人には言えなような趣味を持っている。そのことは多分俺だけが知っている…いや、知ってしまったと言った方が正しい。


「…はい、じゃあ今日も頑張ってね〜…恋瑠璃くん? ちょっといい?」

「………はい」

「今週か来週、空いてる日連絡してね♪」


呼ばれてしまった。呼ばれたくなかった…美人な教師のプライベートのお誘いだが、断りたくて仕方ない。だが断れない。


「無理だと言ったら?」

「私とあなた、2人で人生ドボン」

「…はい、行きます」


何事も無かったかのように江美先生は教室から出ていった。それと入れ替わるように一限の現代文の担任が入ってきた。



あっという間に昼休み。授業の間の休み時間は男友達と談笑することが多く、この時間もクラス男友達といることが多い。昼はだいたい食堂に言ってパンを買うか姉ちゃんが作った弁当を食うかだ。


「今日のきょーちゃんの弁当って、お姉ちゃんが作ってくれたやつだよね?」

「いいよなぁ、かわいい姉ちゃんとしかも義妹もいるんだろ?」

「…おん」


始まった。いつものだ。

仲のいい男友達二人。たまに土日遊んだり、ハマったゲームがあれば一緒にやるくらいの仲だ。一人は運動部でちょっと頭いいギリ優等生タイプとは言いきれないやつ、桐状きりじょう 直斗なおとと、

勉強も運動も普通、お菓子作りとかいう何となくモテそうな趣味を持っているが学校ではThe普通の男、逢坂あいさか 柊壱しゅういちだ。


「それに楓ちゃんとは幼なじみで、他にも女友達何人かいるだろ? なんだっけ? 月野と、オセロ同好会だっけ?のやつ」

「おい、オセロ同好会だ。馬鹿にすんな。 オセロだぞ」


俺の所属するオセロ同好会。俺含め部員は3人、しかも1人は留学生だ。


「どーせ、他にも何人か女友達いるんだろ? はー、羨まし」

「ほんと彼女作り放題だよね。いい加減できたの?」

「だからそんな雰囲気のやつ一人もいないんだよ。全員ただの友達だっつーの」


友達というより特殊な関係のやつ(先生とか)もいるが、結構俺にはよく分からない女友達が多いと思う。


「って言うけどさ、きょーちゃんガチで落としに言ったことあんのかよ? そっちから空気出せばいけるかもしれねぇだろ? 見た目とか態度とか」

「せっかくいい友達なのに変な感じになったら嫌だし、それっぽい雰囲気にも全然ならないっつってんだ。なんなら恋愛相談とかされることあったわ」

「彼女がいないのに!?」

「女友達もいねぇやつにいわれたくないっつーの…はぁ、俺も甘酸っぱい恋とかしてみてぇな」


お互いに傷をえぐりながら食う飯は美味い。馬鹿な話をして席に戻ると、隣の月野と少し話した後午後の授業が始まった。


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