笹慎の掌の上に乗ってみる話(ショートショート集)
笹 慎
六月のベーコン
「私が美味しい時期は、とうの昔に過ぎたのです」
恨みがましい瞳で彼はこう言った。
「なに、私は日本ハムを信じてるし、3ヶ月程度問題ないさ。現にいま開封したが、君は変な臭いもしないし色だって問題ないよ」
熱したフライパンに彼を並べる。パチパチと良い音が鳴る。
「結局フライパンで焼くのですか?つい先日、『電子レンジで作るカリカリベーコン』を調べていたじゃないですか」
「フライパンが一番簡単だって気がついただけさ」
熱で縮こまり波打っていく彼をひっくり返しながら換気扇をつけ忘れていたことに気がつく。
「今日の夕ご飯もドリロコスですか。全くあなたと言う人は気にいると、そればかり食べますね。ひよこ豆なんか入れて健康に気を遣ってるつもりでしょうけど、ドリトスなんていうジャンクフード食べてるんだから無意味でしょう」
もう火を止めたコンロの上の彼はまだ脂を出しながら悪態をつく。
「ロコスはスペイン語でクレイジーって意味なんだから、ヴィーガンみたくひよこ豆にベーコントッピングするんだよ。これこそクレイジーじゃあないか」
「ひよこ豆で思い出しましたが、冷蔵庫でフムスと同じくらい一緒に過ごしましたけど、一昨日彼を冷蔵庫からようやく出されてましたが、彼はどうしたんですか」
アバターのように青と黒の謎の生命体にメタモルフォーゼしていたフムスに想いを馳せながら、その質問は丁重に無視を決め込む。
砕いたドリトス、ミニトマト、サラダ、ひよこ豆、サルサソース、アボカドのディップ。
一番上にカリカリのベーコンを乗せると、私はドレッシングを上からかけた。
さて、夕ご飯を食べよう。
ドリロコスの参考画像はこちら
https://kakuyomu.jp/users/sasa_makoto_2022/news/16817330653554038313
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面白かったら、星★の評価をいただけますと拙者大喜びし候ふ。
あと他にも普通の小説も色々書いてます。
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