第33話 大人の交流会とは……

春陽はるきはどこの場所へ行っても花がありモテモテだった。

大人の交流会と言えば社交的な言葉に聞こえるが、キャバクラ的合コンと

なんら変わりはない。

勿論、お酒はつきものだ。

春陽はるきは社長のオーラを丸出しにさらけ出しデーンとソファーの中心部に

座り偉そうな態度で足を組んでいる。

春陽はるきの両脇に座る女達は露出をむき出しに胸の谷間を強調させたドレスで春陽はるきに寄り添っている。女の豊満な胸が春陽はるきの腕に当たっているが春陽はるきは顔色一つ変えないで笑みを浮べていた。

店に来ている女性客等も春陽はるきに視線を向け、いつの間にか春陽はるきの周りには美人ばかりが集結していた。女達はいつだって男を外見で判断している。

そして、余裕のある男は落ち着いていて俺様的発言をする。

そんな完璧すぎるハイスペック男子はとにかく顔がイケメンだ。

その中でも春陽はるきは特上品である。


同業者の仲間等はそんな春陽はるきを羨ましそうに見ているだけだ。

おこぼれで春陽はるきに言い寄る女に話しかけてお持ち帰りできれば

『OK』だと思っている。

女達の中には高嶺でハイスペックイケメン社長の春陽はるきよりは

ワンランク下げても男をゲットできれば『OK』だと思っている計算高い

女もいる。



相場基準は春陽はるきを中心に常に男と女の間ではそんな駆け引きが

行われていた。


退屈そうな顔で春陽はるきがグラスのお酒をマドラーで混ぜていると、

「どうしたの、春陽はるき

隣から伸びる手がさりげなく春陽はるきの体に触れながら、女は色目遣いで

伺ってくる。

「ん? 別に…なにも…なんで?」

「なんか、つまらなそうな顔をしている。楽しくないの?」

「ああ、楽しいよ」

そう言って、春陽はるきは女の肩を抱く。

「ねぇ、この後さ、ホテル行こうか」

「……?」

一瞬、春陽はるきは驚いた表情を見せたが、すぐに俺様的目で

女を見下すように視線を向ける。

「私はいいよ。春陽はるきとなら…」

女は人差指をモジモジさせて、恥ずかし気な態度で可愛く振舞い、更に男が好きな

胸の谷間を強調してくる。

〈これで、落ちない男はいないはず…。史上最高級特上ハイスペックイケメン社長を頂きます〉


だが、そんな女の見え透いた手口に引っかかる程、春陽はるきもバカではない。


「俺のどこがいいの? 」

春陽はるきが真顔で口元に笑みを浮べて聞く。

「やっぱり、春陽はるきの顔がいいかな。イケメンだし好きよ」

「ふーん…。えっと…君、名前なんだったっけ? 俺、君のこと

よく知らないんだけど…。君は俺の何を知ってるの?」

「知らなくてもいいんじゃない。春陽はるきに抱かれたらわかると思うし…。

ねぇ、ホテルいこーよ」


女は更にその体を密着させて、春陽はるきを誘いにいく。

春陽はるきがあっちの方もすごいってこと、この辺りじゃちょっとした

噂になってるのよ』

女は吐息混じりに囁いた。


「へぇ、そうなの?」

〈どこまでもゲスな女だ〉


春陽はるきがニヤリと笑ったその直後、女の頭から水が滴り流れていた。

女の体からは強めのお酒の匂いがプンプンと漂ってきていた。

そして、春陽はるきが手にしたグラスは中身がこぼれ落ち下を向いている。


「……」

女は呆然と固まっていた。春陽はるきの冷めた視線が突き刺さるようにヒシヒシと感じていた女は俯き加減で顔も上げれないさまをしている。


 この状況からして春陽はるきが女の頭からグラスに入ったお酒をふりかけた

 ことは言うまでもなく、、、、その場の状況が示していた。

 同席していた男女等の視線も唖然にとられ、顔の筋肉さえも強張こわばむほど

 身体中の震えをこらえていた。


「水も滴るいい女か(笑)」

フッとあざ笑い春陽はるきが席を立つ。

「あ、違ったな…。男に媚びを売るゲスな女だ、お前は」

そして、春陽はるきはとどめを刺すように冷酷な言葉を言い放つと、

店を出て行った。



昔は夜遊びしても平気で女と一夜を過ごせるほど、何の罪悪感もなくいられた

春陽はるきだったが、歳と共に性欲が薄れていたのも確かだった。


「俺も歳だな」


だけど、春陽はるきの中で綺麗なまま封印された初恋が萌衣と出会って

不意に思い出すことがあったのも事実だった。


でも、この世にもう雪子はいない現実を春陽はるきはまだ心の奥で

受け止めることができなかったのだ。


人にはそれぞれ与えられた寿命がある。

それは生きている人、全員に与えられた宿命でもある。

それは誰も知らない。


もしかしたら神様だけが知っているのかもしれない。


〈ユキと結ばれなかったのも多分、結ばれない運命にあったからだ―――〉



気づけば春陽はるきの足は藤城コーポレーションの建物の前にいた。


「さすがにもう、帰っただろう…」

春陽はるきは残って仕事をしている萌衣のことが気になり会社に戻ったのだ。


 

静寂した夜風が春陽はるきの酔いをますように見上げたそのに一室の明かりが映る。

見渡す社長室以外の部屋は全て明かりが消えている。

社長室まで見回りに来ない警備員も気づかなかったのだろう。



春陽はるきはスマートセキュリティロックを解除し、ジャケットスーツの

内ポケットから会員証を取り出すと液晶画面に会員証をかざし、

オフィスビル内へと入って行くーーー。




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