あまのじゃくの子

プロローグ

昔、好きな男の子に『好き』だと言えない女の子がいました。

いつも男の子の周りには可愛い女の子達が集結し、クラスの中心的

立場にいる彼に対して、彼女は素直になれず、彼の前ではわざと

強がって見せたり、つい思ってもないような言葉が口走っていた。

口を開けばいつもケンカばかりしていた彼と彼女。

そう、多分 この世の男子は弱すぎるから女子が強く逞しくなるしか

なかったのです。

また、男の子は家柄もよく、父親が経営する不動産業界ナンバーワン

（資産総額数百億円）である藤城コーポレーションの御曹司として

語学、ピアノ、バイオリン、ＩＴプロフェッショナルスペシャリストとして

育てられた。まさに彼の将来は約束された一流企業の社長だ。

己の育ちの環境に恵まれ裕福な暮らしをしていたせいか、彼は幼い頃から頭がよく、何をしてもズバ抜けた才能を持っていた。まさに王子様だ。

いつしか彼のプライドは『自分には手に入らないものなど何もない』と思い始め、

次第に自己中心的な性格へと変わり始める。約束された地位と富、容姿とプライドが自分は支配する側に立つ者だと自覚が芽生え、その姿はまるで王様だ。

だが、いつも、生意気な口調で返してくる彼女だけは他の女子達とは違って見えていた彼はいつしか彼女のことが好きになり告白するが「私、別にアンタなんか好きじゃないよ」とあっさりとフラれた。だけど、それは彼女の本心ではなかった。

そう、彼女の心には【あまのじゃく】が住んでいたのだ。

まだ、幼かった彼は彼女の心まで知ることもできず、そして、彼はどうやら自分の物にならないと、とことん彼女にのめり込むタイプのようだった。

彼女の本心を聞き出そうと、彼はずっと『好きだって』言い続けていたが

彼女の答えはいつも『ＮO』だった―――ーー。

大人に成長するにつれて彼と彼女の距離は少しずつ離れていくが、でも何日か経てば

彼と彼女は普通にしゃべれる関係が平行線に続いていた。

2人は口ゲンカしても、すぐに仲直りできる関係だった。そして、遠慮なく彼に

対して対等に言い合えるのは彼女だけだった。

幼い頃に想いを寄せていた初恋はいつの間にか時代と共に形が変わり風化して

いったのだった、、、、

友達よりは少し上の親友——

友達は永遠に繋がっていける。

彼と彼女にとって友達という関係は互いに楽だったし、居心地のいい場所でも

あった。

口には出さないが、それが彼と彼女が出した答えだったのだ。

最後まで素直になれなかったあまのじゃくの彼女。

この物話にはまだ続きがある―――――ーーー。

ーーー数年後。

彼と彼女は互いに違う別々のパートナーと結婚し子供が産まれた。

そして、平凡な暮らしが普通に幸せだった彼女は絵本作家となり、

30歳の若さでこの世を去って逝く。

残された彼女の娘は当時7歳だった―――。

月日は流れ13年後へ―――――――ーーー

偶然か必然か、なぜこんなことになったのかもわからないまま津山萌衣（つやまめい）20歳は母の過去へとタイムリープしてしまった。母の幼少期から学生時代、同窓会と、

タイムリープを繰り返ししていくうちに萌衣は母が好きだった男の子や母が『あまのじゃく』たったことを知る。

そして、現世に戻った萌衣はなぜか母が好きだった彼のことが気になり、藤城コーポレーションへ面接に行き、藤城春陽（ふじしろはるき）社長の秘書となった。

この物話は母を亡くした娘が母のDNAを受け継いで母が好きだったハイスペック

イケメン御曹司、後（のち）に社長となった春陽と萌衣の恋愛模様を描いたＬＯＶＥ

STORYです。