終幕と序幕 間違いと知り一つに気づく

白銀が去り 金色の雨が川をつくった

気づいたことは些細なこと


なにもいらなかった

雨がたまれば 水たまりを踏めばいい

喉が枯れたら 手を叩き 歯を鳴らす

言葉も知らず 鼻歌で

なんとなく なんでもいい


牙も 爪も 剣も

力はまだ衰えず

振るう気持ちは衰えて


本も弦も歌でさえ

在ることだけで良かった白銀の

思い出す後ろ姿に

金色は間違いだった選択を知る


雨を踏み 砂を蹴り

木の葉で笑い 風で片づけ

その全てが 自分の物にはならない

手にする必要のないものだった


泥が描いた繋がりは

雨がラクガキだと咎めて消えた

求める全てが間違いだったと


在ることを愛した白銀の

少しの哀しみに濡れた目が

金色を見つめていた理由に気づく


鼻歌でよかったのだ

笑いかければよかったのだ

見つめればよかったのだ

手を重ねればよかったのだ


もっとはやく 飾らなくとも


耳を澄まし

問いかければ

金色もまた 首をかしげれば


剣などなくとも 舞はある

弦などなくとも 音はある

本などなくとも 役はある


金色と白銀は違う

その一つに 金色は気づいた


王は輪の中に囲われた

頭を垂れる観衆の

か弱き涙にはまだ

温かき雨にはまだ 気づけず


金色の雨が混ざるのみ


金色の間違いは

多くをもたらし

永くを無駄にし

そして 一つを教えた


ある金色と ある白銀


その間に横たわる平穏には

何もいらなかった






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