第2話 いきなり同棲生活スタート
「つ、妻?」
俺は驚きすぎて、学生鞄を落としそうになる。
「コータの妻になるために転校してきたの」
桜庭さんは俺の手をぎゅと握った。
急に触れられて、俺は身体が固まってしまう。
「あたしのこと忘れたの?」
「もしかして……アイちゃん?」
アイちゃん——俺が子どもの頃、一緒に遊んでいた女の子だ。
親同士が仲が良くて、よくお互いの家に泊まったりしていた。
「ひどいよ。コータ。全然気づかないんだもの」
桜庭さん……アイちゃんはうつむいた。
「……ごめん。全然気づかなかった。あの頃と雰囲気違ったから」
アイちゃんはすごく大人しい女の子だった。
実家は由緒代々続く呉服屋で、すごく厳しく育てられた。
毎日、お花とかお茶とかピアノとか、習い事をやらされていた。
遊んでいい子は俺だけだった。
それは親たちが決めたことだ。
「やっとまた会えたね。すっごく嬉しい!」
「おわ!」
アイちゃんが俺に抱きついてきた。
ぎゅうっと、胸が俺に押し当たる。
おいおい。他の生徒に見られているぜ……
「一緒に帰ろう!」
アイちゃんは俺の腕をつかんだ。
「そうだな。早く帰ろう」
俺とアイちゃんを生徒たちがめっちゃくちゃ見てる。
これは明日、かなり噂になるな。
なんせアイちゃんは、転校初日でこの高校のアイドルになった。
やれやれ。俺は目立ちたくないのに……
「どーしたの?コータ?」
「何でもない。もう出よう」
俺はアイちゃんと校門を出た。
◇◇◇
俺はアイちゃんと駅まで歩いた。
みんなが振り返って、俺たちを見る。
こんなにかわいい子と一緒にいるんだ。
注目を集めるのも無理ない。
しかも、カップルみたいに腕を組んで歩いてるし。
「コータ!今日のご飯、何がいい?」
「え?」
「何驚いてるの?あたしたち、一緒に住むんだよ」
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