観音様の涙

@yonfunfan

　1920年6月21日、日本統治下の朝鮮半島　全羅南道のある農村町に元気な男の赤ちゃんが産声を上げた。父のドンヨブはその子の名前をヨンパルと名付けた。母のスクは違う名前にしたかったけれど、当時の家庭では家父長の意見は絶対的であった。所謂、男尊女卑の時代である。ドンヨブとスクの間にはもうすでに4人子供がいたが、幼い頃病気でなくしてしまっていた。ドンヨブとスクはなんとしてもヨンパルを元気で立派な人物に育て上げるとご先祖様にヂェサを捧げて誓った。

　ヨンパルは親の愛をたっぷりもらい、スクスクと育っていった。ドンヨブはヨンパルから良くも悪くも感じられる神妙で不思議な霊気を感じとっていた。そして、この子は我々の民族、国家を超えて全人類に大きく寄与する人物になるであろと確信していた。しかし、親族、仲間、妻であるスクにすらその心うちを明かす事なく、自分の心の中だけに大事にしまっておいた。ヨンパルの誕生から5年後、ドンヨブとスクの間にまた元気な男の子であるヨンチルが生まれヨンパルは兄になった。ヨンチルはヨンパルと違ってあの不思議な霊気などは感じ取れなかったけど、その平凡さがとても愛くるしい子であった。