君が夜に唄う歌


深夜二時をまわってから

君は突然歌い出す

君は聞いたこともないような

深い哀愁を秘めた声で

失恋ソングをメドレーする

僕はもうずっと聞いている

3年ばかし 聞いている


朝の光は エネルギッシュで瑞々しい

それに当てられて みんなが騒がしいから

君は君自身の声が 聞き取れなかったんだろうな

夜は星々が 静かにまたたいて

みんなを眠りにつかせるから

君の声がよく聞こえる

君の声は天空を 穴に入ったピンボールのように

すっと 真っ直ぐ 届いてくる

失恋ソングを歌うのは 君の心が乾いてるからじゃない

誰にも分かって貰えない辛さを 持つ人達の声に

君が誰より気づきたいから

僕はそう思う


君は誰より優しい人

君のためなら僕はなんでも出来ると思っていたけれど

実際何もしてやれてない


今日も天空は 澄み渡るような紺色で

その中をぽつんと僕が光っている


君の声が 胸に響く

僕はただ 君が訴えかけている

その 感情を

黙って受け止めるだけだ

そして 祈る


君が誰より強くなって

君が誰より人を救えるようになることを


そして、その横で

僕は君を支える杖になって

ただひたすら君の感情を

荘厳な 凛々しい

時に脆く 柔らかい心

残酷な世界の悲惨さを受けて

時に猫にやられた野鳥のように深い傷をおってしまう

柔らかい心を

癒し 慰め 抱きしめる


強い強い 杖になりたい


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