時は流れ始めた


時計塔の中で 錆び付いた歯車を

あなたは見つけた

動かなくなったこの塔の中に

長年放置されていて 埃まみれになってしまったところに

あなたは社会の 一縷の望みを託し託されて

入ってきた 青年だ

冷えきった時計塔の中を

ひとつひとつ点検していく中で

あなたはついに 錆び付いて動かなくなった

小さな小さな歯車を見つけた

これ以外 どこも壊れてなんかいない

しかしたったこれっぽっちの歯車が

この時計塔を支えていたなんて

一体誰が想像しただろうか

あなたは優しく そこに油をさして

力強く 力強く

歯車を回した


時計塔はごおんと音を立てて、ゆっくり

しかし、力強く

今までの挽回をするかのように

激しい音を立てて回り始めた


あなたはその横で、いや目の前で

その塔の復活をただ祈る


全ての事柄が万事そうなのだ

物事が止まる時、それは小さな歯車が動かなくなる

物事を進める時、それはもはや賭けであり

絶対に上手くいく保証など誰が用意してくれるだろうか


しかし、青年には勇気がある

失敗を恐れず また失敗しても成功に向かって

万事勇んで 挑戦する 勇気がある


社会というのは自分一人では回ってなどいないし

社会全体から見れば自分という存在は限り無く小さく

無力なものに見えるかもしれないが

小さなものにも……その中には

宇宙を回す力が秘められているのだ


青年よ 今目の前にある「時」は

厳かな音を立てて回り始めた

ひるむ事なかれ また 時間を空けることなく

回し続けるのだ

今日、明日、明後日

決して急ぎ足ではなく 焦ることも無く

しかし、黙々と 根気強く

あなたは歯車に力を注いで回し続けるのだ


私もそして必ずそうする

あなたの1番の力になろう

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