第21話 暗殺
2:14
リョウガのマンションではあちこちで捜査官が犯人の痕跡を探している…
屋上も2人の制服警官がいるが、そこに谷口が現れ軽く警官に会釈してバッジを見せると非常階段に不審物が無いか探すよう命令する。
警官が屋上を降りると室外機の並ぶ隙間から校長が現れた、谷口から紙袋を受け取ると中に入っている警官の制服に素早く着替える。
谷口
「行くぞ」
「…」
無言の校長が谷口の後に続いて非常階段を下りる…
階段で不審物を探すように言って追い払った警官に出くわすと今度は屋上の警備に戻るよう伝えた…2人の警官は最初1人だった谷口が制服警官を1人連れてる事に何の違和感も感じていないようだ。
非常階段から1階のエントランスに出ると守衛室で防犯カメラの映像を調べる矢野口を横目に何食わぬ顔で2人はマンションを出た。
校長は谷口の車で新たに私服に着替える、その時日本語学校に家宅捜索が入った事を聞かされた校長は〝そうか〟と小さく答えただけで行き先も言わずタクシーを拾い何処かに向かった…
校長の態度に不満を感じつつも谷口はリョウガのマンションに戻り警察の捜査に加わる。
守衛室では矢野口と捜査官が監視カメラの映像から1人の男を特定していた…
マンションの住人では無い防犯カメラに映ったジャージ姿の男を重要参考人として特定したものの映像からでは身長と体重くらいしか分からない…手懸かりはほぼ無しと言ってよかった。
福富町
日本語学校
学校が入っている雑居ビルを制服の警官達が取り囲んだ…
こずえは、一緒にドラッグマンを見張ろうと言う提案に同意したはずの佐藤が応援を呼んだ事を問いただす為に佐藤に電話をする。
: どう言う事?
: 我々は組織だ、貴方に同意する事がドラッグマン逮捕に繋がると判断したが、上司にそれを報告した…
: そう…上司ってたしか、梶山警部よねぇ?
: まぁ…
佐藤は矢野口の事は言わない、警察の基本的理論〝話を聞くが教えない〟相手の知ってるであろう事以外の話はしない情報漏洩の観点から正しい事だろうが人としてはいただけない。
: フンッ、いいわ…じゃあ、私はもう必要ないわね帰るわ…
こずえが電話を切った、佐藤は慌ててこずえが居たビル正面に廻ったがこずえは居ない…
刑事としてそれなりに場数を踏んでいる佐藤はドラッグマンならともかく自宅の知れたこずえが消えても問題ないと分かっていたが念のため矢野口に報告した。
矢野口もこずえにはこだわらなくて良いと判断して、佐藤に日本語学校を捜索するように指示をした。
佐藤は、取り囲んだ捜査官の指揮を取り日本語学校の家宅捜索をする。
日本語学校の責任者は校長の吉沢ハルだが連絡が取れなくて強制捜査になった。
捜査官
「佐藤さん、このドアびくともしないですね」
佐藤
「管理人は入り口の鍵しか持ってないからな…」
警察もこずえ同様校長室の扉に舌を巻く。
佐藤はカギ屋を呼んで扉を開けようとしたが専用の機材が無いのでウチでは無理だとカギ屋は帰ってしまった、困った佐藤は矢野口に電話をする。
: 忙しい所すいません、校長室のドアがカギ屋でも開けられないんですけど…
: カギ屋に開けられない…? ビンゴでしょ! 壊してでも入って下さい…
佐藤は扉をガスバーナーで焼き切ってゆっくりと扉を外す…
室内にトラップが無いか捜査官に確認させて室内を調べだす。
校長室でまず気になるのがPCだが調べると履歴どころか完全に初期化されていた…
あとは金庫だ、佐藤はカギ屋にとも考えたがバーナーで焼き切る事にした。
金庫を開けると大量の薬物と拳銃が出て来た…
電話で知らせを聞いた矢野口は日本語学校に向かう。
矢野口は到着すると応接室のPCを調べている佐藤に声を掛ける。
「何か組織と繋がりそうなモノはありましたか?」
「あっ警視、校長のPCは空でした…念のため鑑識に使用痕跡の復活が出来るか調べてもらってますが難しい見たいです」
「そうですか…」
「それと、このPC何ですけどリョウガ君の事件を最近閲覧してます…こずえはこれを見てリョウガ君の暗殺を予測したのでは…」
「可能性はありますね…」
矢野口はこずえが記事の閲覧だけでリョウガ暗殺を予測した事に疑問を感じた…
確かに矢野口や梶山ならその予測にたどり着くだろう、何故なら警察の情報で組織の存在や非情さを知ってるからだ…
もしかすると、こずえも組織を知っているのかも知れない…坂下あきらをドラッグマンに近付けその後ドラッグマンにこずえが近付こうとするのは組織を探るため…?
そうなると、また疑問が浮かぶ何の為に…
矢野口は一旦頭を切り替え日本語学校の捜索を始めた。
「現物(薬物や拳銃)はもう鑑識に?」
「はい、何か出ると良いんですけど…」
矢野口は佐藤と、調べ終わった校長室に入り人に聞かれて無いのを確認すると極秘で指紋や頭髪のDNAを捜査本部の刑事と照らし合わせるよう佐藤に指示をした、今現在この学校の捜査に刑事は佐藤と矢野口だけだDNAの照らし合わせはスパイの捜索だ。
警察の情報は確実に漏れてるが上手くやれば相手を誘導出来る、リョウガの偽情報もその1つだ…
矢野口は警察に紛れ込んでいる組織のイヌを探す。
リョウガのマンションを調べ、校長の痕跡が無いことを確認した谷口は日本語学校の事は諦めて帰宅すると駐車場で車の中から校長に電話したが繋がらないため、校長の痕跡が無い事の報告をメールで知らせる。
5:00
Hふ頭殺人事件捜査本部
朝早くから捜査員が集まって会議が始まる…
深夜の日本語学校捜索でドラッグマンの物と思われる大量の薬物と拳銃を押収して校長の吉沢ハルを指名手配した事が発表された。
新たにドラッグマンのボスと思われる吉沢を指名手配した事で今までサイバー課に任せきりだった一課が精力的に動き出す。
捜査一課に席を置く麻薬組織のスパイ谷口は日本語学校から自分に足が付く事は無いと確信しているが、自分では連絡の取れないドラッグマンの事が気になる…しかし、ドラッグマンとは校長の吉沢を通して繋がっていたため吉沢と連絡が付かなければ話しようがない、苛立ちと不安を感じる谷口にリョウガの意識が戻ったとの情報が入り焦りを募らせていた。
捜査一課は日本語学校の教職員を警察本部に引っ張る段取りを始めている、教員で働くカルロ(ドラッグマン)も当然手配されている、組織は麻薬密売をするのに極力構成員同士の繋がりを失くしていた為、カルロも谷口を知らないし谷口もカルロを知らされて無い…
だが、刑事の情報量と仕事柄で谷口は教員のカルロがドラッグマンで間違いないと思っていたが、手配中の捕まるかも知れないカルロに素性を明かす理由は何も無い…
谷口が、今やる事はドラッグマンと紐付いてる吉沢の口封じだ。
横浜のマーケットは崩壊した組織としてはかなり不利な状況になった、谷口は顔も知らない組織のボスからの一方通行の連絡がそろそろ来るはずだとセキュリティの高いガラケーを握り締めながら少しでも早く連絡が来るのを祈った。
横浜中央病院
リョウガの病室を見張る梶山の携帯が鳴った…
県警本部からの連絡でこずえから梶山宛の電話があった事が伝えられた、梶山はこずえに対してリョウガを見殺しにしたような、こずえのお掛けでリョウガ暗殺を阻止出来て有難いような複雑な感情でいたが直ぐに電話をした。
: もしもし、梶山だ …
: リョウガの様態を教えて欲しいんだけど…
: 様態…なぜだ?
: 私の数少ない友達だから…
: あきら君はどうでも良いのにリョウガ君は気になるのか?
: そんな嫌味を言うほど私には教えたくないの?
梶山からすると、こずえとドラッグマンの関係性は未だに謎だ…
ゆえにこずえが本当に心配してるのか、たんにこちらを探っているのか判断が付かないため本当の事を教えずに意識は回復したとフェイクを伝える事にした。
: 意識は戻ったが記憶がまだ曖昧な状態だ …
: 彼に会えるかしら?
: 狙われたばかりだから今は誰にも合わせられない …
: そう、でも無事なら良いわ…落ち着いたら連絡してとリョウガに伝えといて …
: リョウガ君を見殺しにしたのに連絡は欲しいのか …
: へぇ~、そんな風に思ってたんだ…私はただ、奴等が何でリョウガに興味があるのかが知りたかっただけリョウガを襲う何て …
梶山はこずえが奴等と言った事に引っ掛かるが、あえてそこはスルーして話を続けた。
: そうか…しかし、君を尾行してたお掛けでリョウガ君を助けられた、そう言う意味では感謝してる、リョウガ君にはそれも含めて伝えとく …
: 含めて…リョウガが誤解するような伝え方は止めてくれる、だいたい警察がリョウガに協力させといて放ったらかしにするからでしょ? 私を非難するのはお門違いね …
こずえに電話を切られた梶山は、リョウガの様態を確認したこずえがまた動くのではと思い矢野口に電話をしようとするが、約束通りの万全の警備態勢を考えれば自分はここに居るより捜索するべきだと県警本部に戻る。
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