第10話 異端児


【異端児】



サイバー課に警視庁の厄介者、矢野口警部が転属して来た。


矢野口は変り者でしかもキャリア組だから階級が高く扱いづらい…

 そんな矢野口が県警に転属願いを出したのは昨日だが、彼をもて余していた警視庁は彼の気が変わる前にと異例の早さで転属をさせた。





県警本部サイバー課




サイバー課田代警部

「みんな注目!急遽本日から神奈川県警サイバー課に転属になった矢野口警部を紹介する!」


田代警部の横でキョロキョロするだけで何も話そうとしない矢野口…


「あっ、あの…矢野口警部、自己紹介をお願いします」


「いえ、今ので十分ですので…」


「はっ? しかし…」


警視庁の人事部は、配属をスムーズに進める事を優先して矢野口の変人ぶりはあえて伝えてなかった。


矢野口警部

「そんな事より、城山リョウガさんは今何処に?」


「城山…リョウガ…? まさか、あのハッカーの?」


「そうです、何処ですか?」


「城山リョウガには確かにドラッグマンの捜査協力をしてもらいましたが…その時だけですよ」


「えっ、もったいない」


「なに言ってるですか民間人と殺人の捜査なんてする訳ないじゃ無いですか」


「そうですか、残念です…ところで僕の席は?」



警部同士の短いやり取りだが、田代警部に矢野口の変人振りは伝わった見たいでそそくさと席に案内する…キャリアの矢野口は時期に警視になって田代の上司だが、この手の人間は関わら無いのが最善だと田代は思った。




席に着くとデスクに自前のPCを置いて立ち上げると隣の刑事に話しかける。


「君の階級は?」


突然のキャリア組の転属に緊張していた佐藤刑事だが、名前の前に階級を聞かれた事で少しムッとするが詰まりながらも素直に質問に答えた。


「はっはい、巡査部長の佐藤です」


「巡査部長ね、もうすぐ警視の矢野口だ宜しく」


この瞬間、矢野口は県警第一号の手下に佐藤君を任命した。



手下の最初の仕事は城山リョウガの調査だった。




佐藤刑事

「矢野口警部、城山は多分出社は余りしてない見たいです…在宅勤務がほとんどですね」


矢野口警部

「なるほど、なら時間はあるか…」


佐藤に車の運転をさせてリョウガのマンションに向かう矢野口…

マンションに着くと近くで待つように佐藤に指示をした。


「えっ、しかし私も捜査があるのですが」


「大丈夫、上には私のバディだと伝えてあるから」


どうやら上層部も佐藤が矢野口の手下と認めたようだ。



矢野口がマンションに入ろうとすると中から梶山警部が出てきた。

梶山は矢野口に気づくと一瞬怪訝な表情をしたが直ぐに素知らぬ振りでスレ違う…

矢野口は矢野口で梶山を認識してないので目もくれずにマンションに入った。



矢野口はエントランスで迷わずリョウガの部屋番号を押した、呼び出し音に梶山が忘れ物でもしたのかと思ったリョウガは直ぐにインターホンを取ろうとしたがモニターに映る見知らね男に警戒して居留守を決め込む。


しばらくしてモニターを覗くと誰も居なかったので安心するとリョウガのスマホが鳴った梶山警部からだ。


: もしもし…


: 確認なんですが、警視庁から転属して来たキャリアの警部が君のマンションに入って行ったんだ…まさか…


: それって、七三でタレ目の人ですか?


: やっぱり、リョウガ君に会いにきたのか…何を話しました?


: モニター見て知らない人だから居留守しちゃいました…


: そうですか賢明です…


: えっ、でも警部さんなら話したほうがよかったんじゃ無いですか?


: いや、警視庁では変人で有名だった男らしくて…いろいろややこしくなると面倒だから…


: じゃ~居留守で正解ですか?


: まぁ、でも何で会いに来たかは気になりますね…また来ると思いますが、今度来たら目的を確認して貰えますか…



梶山はリョウガに2人がこずえの捜査をしてる事はくれぐれも悟られない様に念を押して電話を切った。







県警本部


リョウガに居留守を使われたと、うすうす気付いている矢野口が佐藤君を使ってリョウガとの接触を図る。


「巡査部長」


「佐藤です」


「えっ、そんな事より居留守の城山君何ですが面識あるでしょ?」


名前を覚えない矢野口に佐藤ですとアピールするも、そんな事で片付けられヘコみながらも手下の責務を果たす佐藤君。


「面識と言っても挨拶したぐらいですよ」


「結構じゃないですか挨拶が済んでるなら友達です、電話して下さい」


「えっ、しかし何を話せば…」


「もうすぐ警視の矢野口が話をしたいと…」


「りょ…了解です…」



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