第17話 高齢化

「美味しいですわね、美味しいですわね」


 メラリーは、すっかりご機嫌になってお茶を楽しんでいた。茶葉は高級品ではなかったが、リーファの淹れ方がうまく、さらになんといってもお茶菓子のクッキーが美味しかった。


 パクパクとクッキーを頬張るメラリーに、リーファは微笑む。


「よかったです、それ村の特産のチーピを使ったジャムなんですよ」


「へぇ……チーピが名産なのですのね。チーピといえば隣国のソルティア産のイメージが強いですわ」


「あー……バッタル村は生産量少ないですからねぇ」


 バッタル村の主要産業は農業だった。ほとんどすべての住人がなんらかの畑を持っており、そのなかでもチーピを育ててる家は多い。

 

 とはいえ、バッタル村は人口が少なく労働力が足りないため、広大な農耕地をもってのチーピの大量生産はできない。


 ゆえに、メラリーにとってのチーピのイメージは、領地内のバッタル村より、隣国の一大農耕地ソルティアのほうだったのだ。


 クッキーを齧りながら、メラリーはたずねる。


「つまりは、もともと狭い土地で農業して生活していたけれど、村の高齢化で若い働き手が減少、それによる村の貧困化ってとこですわね」


「はい、そういうことですね」


 リーファは苦笑する。耳が痛いといった風だった。


「ふむ……」


 メラリーは紅茶を口に含み、しばし思案する。


 お父様は、この村の課題を解決しろと試練を出してきた。


 そして、この村の問題の根幹は高齢化。


 ならば、やることは単純明確である。


 メラリーは、両手の人差し指をクロスして言った。


「では子作りすればよろしいですわ!セックスしなさいっ」


「セッ……!」


 リーファはポッと顔をあからめる。白い肌は面白いほどに赤く染まっていた。


「若い人が少ないなら、作りだせばいいそれだけのことですわ。さぁさリーファさん、いまいる村の若い人たちを集めて婚活パーティを開きましょう」


 メラリーは、これは名案だとばかりにまくしたてる。しかし、リーファは手を前に出し、それを静止する。


「ちょ、ちょっと待ってくださいメラリーさんっそれはたしかにその……村の未来のために大切ですし、ぜひ採用させてもらいたい名案なのですが……」


「?」


 メラリーは首を傾げる。正しいことを言ったはずなのになぜ止められるのだろうと。


「村を案内しますので、現在村が抱えてる課題を一旦整理してみませんか?」


 リーファは、メラリーの顔色を伺う。


 メラリーは目をぱちくりさせて言った。


「……そうですわね、先走りすぎましたわ。まずは案内してくださる?」


 リーファはホッと胸を撫で下ろした。しかし、もしかしたらとんでもないひとを村に招いてしまったのではないかと不安は残ったのだった。

 

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