第14話 オーナー集会
日を跨いで、次の日。
「と、いうわけでガーレットさんの協力を仰ぐことができました!」
村の集会所に、フレアは20人前後の人を集めた。
長い卓を囲っているのは、歳をとった老人ばかり。一番若そうな男ですら、頭が禿げ上がっていた。
長方形の卓で、短辺にあたる席に座らされたガーレットは、若い女が自分とフレアしかいないこの空間を居心地悪くおもった。
老人たちの方も、どこかよそよそしくしている者、値踏みするような目で見てくる者などガーレットを受け入れる態勢ができている様子ではなかった。
フレアは、ガーレットに老人たちを紹介する。
「今回集まってくれた方々は、アシナ村商店ギルドに加盟している、商店通りのみなさんです」
「……よろしくお願いします、お父様からアシナ村の課題解決について、助力するよう託されました、ガーレットと申しますわ。若輩者ですが、尽力したい所存ですわ」
ガーレットは、席から立ち上がって、丁寧なお辞儀をした。商店ギルドの面々は、まばらに拍手をした。
席に座り直したガーレットは、フレアに尋ねる。
「今回集まってくれた皆さんは、つまりはアシナ村で何らかの商店を出店している方々ということでよろしいですか?」
フレアは首を振るう。
「いえ、商店通りに貸し物件を持っているだけの方がほとんどですね。現在も自分で店をやってる方は…ひぃふうみぃ…5人くらいでしょうか」
「ああ、そうなのですね……」
考えてみれば、平日の昼間だというのに、こんな集会が開けるのは普通ではなかったことに、ガーレットは気がつく。みんながみんな貴族である自分のように余暇のある生活をしているわけではないのだ。
集まった面々は、店をやってるわけではなく、商店通りに貸し物件を持っている人々。
つまりこの集会の議題は……。
「それではみなさん、マイル商会さんに出店してもらいたい店のご意見をください!」
フレアは、オーナーたちがどんな店舗を自身の物件にいれたいか、それを話すあうために集会を開いたのだ。
「さぁさぁ楽しい意見交換会ですよ!みなさん遠慮せずなんでも言ってください!」
フレアは意気揚々と進行する。
しかし、オーナーたちは腕を組んだまま口をつぐむもの、隣同士で話をするだけで手をあげないものなど、一向に意見は出なかった。
この反応が、フレアには予想外だったようで、はて、と首を傾げる。
「いいんですよ、みなさん!実現可能かはマイル商会が判断するのでいまはどんな無茶を言ってくれても……例えば都会で最近流行りのスイーツ屋さんとか!だれかそういうお店入れたい方いません?」
「……………」
これにもオーナーたちは反応が薄かった。
ガーレットは、フレアとオーナーたちの温度差を感じた。あまり彼らにはやる気がないように見えたのだ。
「あ、あれ……?え、えーと…あまり希望がないようでしたら、私たちで考えたものを伝えますけどよろしいでしょうか?」
「あーそれでいいよ」「すまんなフレアちゃん」「まぁ…そういうことで」
そのまま集会はグダグダに終わった。
オーナーたちは各々世間話をしながら、集会所からぞろぞろと出ていった。
フレアは、ガーレットを前に、気まずそうに頭をかく。
「え、えーと……ふだんはみなさんおしゃべりなんですけどね、どうしたんでしょう」
「貴族である私がいたからでしょうか、もし気を遣わせてしまっていたのだとしたら申し訳なかったですわ」
「い、いえ!そんなことはないと思いますっ」
結局、マイル商会に出す意見内容はフレア主体にガーレットとと2人で固めた。
ほとんどがフレアが村にできて欲しい店を並べるという夢のような内容であった。
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