第7話 おすそ分け
バッタル村の名産品チーピのジャムをパンに塗って、口に入れる。
もう何度も食べた味だが、飽きることのない旨味が口いっぱいに広がり、思わず笑みが溢れるリーファ。
父親はその様子を目を細めて見つめる。
「かわいいやつだなお前は」
「んー?うんっ」
リーファは思春期に差し掛かっていたので、その言葉を軽く受け流して、咀嚼を続けた。
食事を楽しんでいると、ギィィっと玄関の方で扉が開く音がした。
「お邪魔しますぅ、あらリーファちゃんお食事中だったかね」
訪ねてきたのは、隣の老人だった。手にはカゴを持っており、なかにはいっぱいのチーピが詰まっていた。
「お土産もらったから、これお返しね」
「そんな、畑を見てくださったお礼でしたのにすみません」
父親は頭を下げた。隣人は気にしないで、とカゴを押し付けてくる。
リーファはもらったチーピの皮を剥いて、切り分ける。隣人とともに食べることとしたのだ。
食後のデザートとなったチーピを、フォークで食べるリーファ。すると、口いっぱいに広がる糖度の暴力に目を回した。
「これすごい!」
嬉しい反応を見せてくれたリーファに、老人は微笑む。
「特別だからねぇ。バッタル村でしか食べられないよ」
すぐに二切れ目にフォークを指すリーファ。口の中にはまだひと切れ目が残っている。
咀嚼しながらリーファは思った。
美味しいものがたくさんあるこのバッタル村が好きだ、と。
田舎で人は少ないし、不便なところもあるけど、ここに住み続ける生活も悪くないとリーファは思うのだった。
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