陰陽探偵伊月直道

荒川 麻衣

第1話 陰陽探偵、伊月直道、参る

「闇にひそむ妖怪たち。

 それを斬るは、陰陽師の末裔。

 新番組、陰陽探偵、伊月直道(いつきなおみち)

 こうご期待!」

 この話がもしアニメだったら、そんな予告ナレーションがつくのだろう。

 しかし、実際の直道(なおみち)はというと。

「起きろ」

 授業中寝てばかり。ほら、先生に頭はたかれた。これじゃあ、ギャグアニメだ。

「痛いなぁ、もう」

 そう言う風に泣くあいつは、「ヒーロー」とはまるでほど遠い。


「伊月、寝不足か?高校生なんだし、

 家の都合か?」

「いや、この前、人喰い鬼に会ってきたところだ」

「人喰い鬼?」

 こいつと話すと、妖怪の話が、ぽんぽん出てくる。

「今は、菜食主義者?ヴィーガン?ってやつで、ほとんど野菜しか食わない」

「そんな人喰い鬼があるか」

「この世界には、なんでもあるんだよ」


 しかし、一般人の俺には、どーしても、ピンと来ない世界だ。

 直道の言う、「妖怪」とは縁がない。

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