第59話 1回戦開始

『Bブロック1回戦第5試合……出場選手の皆様は、魔法陣の前に整列ください』


 わああああああっ


 ホールを埋めた観客が歓声を上げる。


 ダンジョンバスター・トーナメントは近畿地方の様々な場所で行われるので、今日の試合会場は自宅からほど近い大型コンサートホールだ。


 コンクリートの壁面に、5つの魔法陣が浮かび青白い光を放っている。


「俺たちの番号は3……真ん中だな」


「朝ごはんもたくさん食べたし、リーサぜっこうちょ~!!」


「うむ! 腹八分目が大事じゃな!!」


「あれでかよ……」


 試合に向けての栄養補給だと、20枚以上のサンドイッチを平らげた娘たちである。


「あはは……」


 フェリナとミアが”家族”に加わり、最近飯ばかり作っている気がする俺である。

 やはり、リーサに自炊の特訓をすべきか?


 家事時間の増大に真剣に対策を考えていると、いつの間にか出場選手たちが揃ったようだ。


 アメリカと中国代表のCランクダンジョンバスターが一組ずつと、ドイツのBランクダンジョンバスター。


 それに……。


「おお、万年Fランカーのクソ雑魚ユウさんじゃないですか!

 ボッチでソロプレーだったのに、がきんちょ連れてお遊戯っすか?」


「おいおい、いまやBランクだぜユウさんは。

 頭が高~い」


「「ぎゃははははっ」」


 隣に並んだのは年若い二人のダンジョンバスター。

 ふたりとも髪を赤く染め、ジャラジャラと趣味の悪いアクセサリーを付けている。


「レイジとトージか、久しぶりだな」


 コイツらは俺が以前所属していた陣さんのギルドで同僚だったダンバスだ。

 確かランクはDランク……万年Fランクだった俺の陰口を、いつも聞こえるように叩いていた。


「ういっす!」

「オレたちも陣さんの元で頑張りまして~、いまやBランクですよぉ?」


「……へぇ?」


 先月のダンバス協会の公報で、陣さんのギルドがノーツお抱えになったのは知っていた。

 だが陣さんのギルドに所属するダンバスはほどんどがD~Eランクで、Cランク以上は数人しかいなかった。

 この二人も勿論Dランクだった。


(この短期間でBランクに上げて来たのか?)


「まあ、お手柔らかに頼みますよぉ」

「がきんちょ共も、泣かしたらごめんな、くくくっ」


((イラッ☆))


『それでは選手の皆さんは、競技用ダンジョンへ転移してください』


 リーサとミアが青筋を立てたのが、魔力の動きで分かる。

 振り向いて宥めようとしたが、アナウンスが競技の開始を告げた。



 ***  ***


「もう! なにアイツら!!

 絶対ぶっとばーす!!」


「くくっ……この余をがきんちょなどと。

 目にモノを見せてくれるわ!」


 ダンジョンへ転移し、いつもの冒険着に着替え終えたリーサとミアがぷんぷんと憤慨している。


「アイツら、この1か月で2ランクもランクアップしていた。

 念のため、ふたりとも気を付けろよ?」


「よゆーだよ!」

「ふ、お主は心配性じゃな」


 やる気十分なのはいい事だが、俺は妙にレイジたちの事が気になっていた。


『二人とも目立った活動記録は無し……先月からノーツ研のとある”実験”に参加していたようです。残念ながら、詳細は公開されていないですね。

 すみません、わたくしがノーツ家から飛び出していなければもう少しわかったかもしれないですが』


 情報をネットで調べてくれていたフェリナも残念そうだ。


「いいさ、フェリナはいまの方が魅力的だ」


「だねっ、ユウ!」


『ユウさん、リーサちゃん……』


「くくっ、もう少し部屋は片づけた方がいいと思うがな」


『ミアちゃんにまで言われた!?』


 最近ちょいちょいフェリナの部屋に遊びに行ってるらしいミアに突っ込まれ、ショックを受けるフェリナ。


「アイツらはセコイからめ手が得意だからな……気を付けるに越したことはない」


 俺はみんなにスキルポイントを割り振る。


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 ■個人情報

 明石 優(アカシ ユウ)

 年齢:25歳 性別:男

 所属:F・アカシアギルド

 ランク:B

 スキルポイント残高:0(-4000)

 称号:ドラゴンスレイヤー

   災害迷宮撃破褒章


 ■ステータス

 HP  :200/200

 MP  :0/0

 攻撃力 :100(+50)

 防御力 :160(+50)

 素早さ :20

 魔力  :0

 運の良さ:20


 ■装備/スキル

 武器:ダマスカスブレード(50×7回)

 防具:ダマスカスメイル(50×5回)

 特殊スキル:攻撃強化技10%(100×3回)

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 ■個人情報

 アカシ リーサ・レンフィード

 年齢:11歳 性別:女

 所属:明石 優のパートナー

 ランク:H(ダンジョンバスター見習い)


 ■ステータス

 HP  :80/80

 MP  :100/100

 攻撃力 :50(+50)

 防御力 :50(+50)

 素早さ :100

 魔力  :100

 運の良さ:20

 武器:チタンボウガン+(50×3回)

 防具:ファイバーブレザー+(50×3回)

 特殊スキル:ファイアLV2(30×5回)、ブリザードLV2(30×5回)

      エンチャント(50×1回)、フレア・バースト(150×1回)

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 ■個人情報

 アカシ ミア

 年齢:13歳 性別:女

 所属:F・アカシアギルド

 ランク:E

 スキルポイント残高:-

 称号:まおう


 ■ステータス

 HP  :80/80

 MP  :100/100

 攻撃力 :50(+50)

 防御力 :50(+50)

 素早さ :100

 魔力  :100

 運の良さ:20

 武器:ハンドファング+(50×3回)

 防具:ホワイトローブ+(50×3回)

 特殊スキル:ウインドカッターLV2(30×5回)、カーズLV2(30×5回)

      ダークバスター(200×1回)

 固有装備:シルバーオーブ

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「今日もユウが前衛?」


「ああ」


「ルールでは、戦闘不能になっても一定時間後に復帰できる。

 さらに、パーティのリーダーを倒すと高スコアが獲得できる」


「ふむ、つまりは捨て身でお主を狙ってくる輩が増えるという事じゃな?」


「正解だ」


 察しの良いミアの頭を撫でてやる。


「ふむ♪」


 黒いネコミミと尻尾が機嫌よさそうに揺れている。


「ミアちゃんだけずるい! わたしも!」


 リーサがてててっと駆けよってくる。


「つまり、防御力を上げたユウが敵を引き付けて……素早さを強化したわたしとミアちゃんが狙撃する作戦ってことだね!」


「素晴らしいぞ、リーサ」


 さすがは俺のはいすぺっく☆リーサである。

 もふもふの銀髪をガシガシと撫でてやる。


「えへへ~」


『ふふっ。

 ……ここから100メートル以内に3チームを検知、レイジらは一番遠い位置にいそうですね』


 競技用ダンジョンは1辺数百メートルはある巨大な迷宮。


「とりあえず、近くの連中から片付けるか」


「おお~っ!」

「心得た!」


 元気に両手を振り上げるリーサと、不敵に笑うミア。


【現在の獲得スコア、各パーティ0……状況を開始してください】


 ジャッジからのアナウンスが入り、1回戦の戦いが開始された。

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