2.わたしと妖精について

「まずは改めて、私はこの世界の植物全てを司る緑の妖精!この緑の森を管理している偉い妖精よ!」


そう言って、緑の妖精は手のひらの上に大きな種を出現させて、そこから何もせず発芽させて見せた。


「おお!すごい!」 

「でしょお!!ふふっ」


母親に褒められた子供のような顔で、手に持っていた種をポイっと木の下に投げ捨てた。


 誰かに当たっちゃうんじゃ・・・。


「・・・こほん。えーっと、まずは私たち妖精について教えてあげるわね」

「・・・はい」


緑の妖精は「もっと元気出しなさいよ」と優しく笑ってわたしの頬をぷにっと突いた。


 ・・・なんで突いた?


「まず妖精とは、この世界の自然そのものを証明する存在なの」

「はい?」

「分かりやすく例えると、この世界からもし私が消えると、同時にこの世界の植物という存在が全て消えることになるわ」

「な、なるほど・・・」


 妖精って・・・わたしが思ってたよりも世界にとって大事な存在みたい。


「逆に言えば、この世界にあなたが誕生したことによって、新しい自然も同時にこの世界に誕生したことになるわね」

「それが雷、と」

「そうね、そのカミナリとやらがあなたが証明する自然になるわ」


 雷というよりは電気そのものを・・・って感じかな?それだと、この世界には今まで電気が存在しなかったことになるけど・・・。

 そういえば、人体にも電気が流れてたハズだけど、その辺りはどうなっているんだろうか。


とりあえず、疑問に思ったことをそのまま聞いてみた。


「え?人体にデンキ?聞いたことないわねぇ。私はそういうことには詳しくないから・・・でも、人間や他の動物達は体に魔気っていうのが流れてるらしいわよ」

「マキ?」


 聞いたことない・・・。少なくともわたしが人間だった頃にいた世界には無い物だよね。


「ええ、魔気。たしかその辺は2000年くらい前に闇の妖精が引き継いでいたわね・・・私はよく知らないんだけど」

「そうなんだ・・・・え、2000年?闇?」


 さっきから世界とか2000年とか、スケールが大き過ぎる。


「私の他にも、ここみたいに妖精達を管理している偉い妖精が何人かいるのよ」

「もしかして、火の妖精とか、水の妖精とか??」

「そうそう。他にも、土の妖精、空の妖精、あと闇の妖精がいるわね。まあ、この緑の森ほど妖精がたくさんいるところは無いけどね!」


 緑・火・水・土・空・闇か・・・光はないのかな?ゲームや小説だとありそうだけど・・・


一通り説明が終わったらしい緑の妖精は「他の偉い妖精はあまり子供を創らないのよね」と付け足して、満足そうな笑みを浮かべて、わたしの座り方を真似してちょこんと正座した。


 ちょっと!満足そうにしてるところ悪いけど、まだ色々と説明が足りてないよ!?


「えっと、聞いていいことか分からないんだけど、子供をつくるって・・・その・・・」

「あなたが何を想像しているか知らないけど、子供たちは私たち偉い妖精の『こんな自然が欲しい』みたいな願いによって、この世界に生み出されるのよ。くれぐれも人間とかと一緒にしないでよね!」

「そうなんだ・・・」

「あ、でも昔に人間との間に子供をつくった妖精もいたわね」

「ソウナンダー」


 ・・・あまり考えないようにしよう。


「それで?他に何か質問はあるかしら?なんでも答えてあげるわよ!」


緑の妖精が顎をくいっと上げて、少し得意げな顔でわたしに質問を促してくる。


「2000年って言ってたけど緑の妖精はいったい何歳なの?」

「さー、分かんないわね」

「・・・・・」


わたしはジトーっと緑の妖精の顔を見つめてみる。


「なによ!?しょうがないじゃない!そんなこといちいち覚えてないわよ!」


 逆ギレされた・・・。


「それで?他に何か質問はあるかしら?私に分かることなら答えてあげるわよ!」


 言い直した・・・。


「わたしもあなたの・・・緑の妖精の子供なの?」

「そんな訳ないじゃない、願いで生まれる妖精は、その願った偉い妖精の証明する自然以上のもの、つまり、その系統の自然じゃないものを証明することは無いの。自分で管理出来なくなるからね。あなたのそのカミナリは私が管理できる域を完全に超えているし、願った記憶もないわ」

「え、じゃあわたしって・・・」


 なんで生まれたの?


「私は、この世界に無い自然現象が起きたから、新しい妖精が誕生すると思って、あそこであなたを待っていたのよ。あそこは特別なところだからね」

「・・・こういうことってよくあるの?」

「ないわねー」

「え、無いの?」


 もしかして、わたしってかなり特殊な存在だったり?


「・・・さてと!そろそろ下に戻って子供たちにあなたを紹介しにいくわよ!」


緑の妖精はわたしの疑問に答えることは無く、そのままわたしの手を引っ張って下へ飛び降りた。上に飛んだ時よりも何倍も速い速度で下へ降りていく。


ぶおーーっと、すごい風の音が聞こえるなか、わたしは一番気になっていたことを聞いた。


「ねえ!あなたのお名前は?なんていうの?」

「名前?何度も言ってるじゃない!緑の妖精よ!偉い妖精の!」


 緑の妖精が名前?・・・もしかして「偉い妖精」っていうのは役職名みたいなものなのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る